Entries from 2021-01-01 to 1 year

沖田の声はひどく穏やかで

沖田の声はひどく穏やかで。冬乃は、かえって悲しくなって沖田の目を見れずに、 「山南様は・・」 湯呑の、水鏡をかわりに見つめた。 「・・山南様のご意志で、避孕方法 切腹されることを選ばれたのですよね・・」 人の世に疲れ果て、その先の諦念を心に懐き…

井上が離れの庭の前に立ち

井上が離れの庭の前に立ち、隊士達の人払いをしている中で。 冬乃は井上に会釈して女使用人部屋に入るなり、殆どへたりこむようにして座った。 「あんたは・・如何して帰ってきたりしたんだ!」 すぐに襖越しに聞こえてきた、土方の悲痛な声に続き、 「幹部…

冬乃は、離してください

冬乃は、離してくださいと目で訴えつつ山崎を上目に見上げ。 「私は、彼にどう想われていても想われてなくても、いいんです」 先の冬乃の『ほっといて』発言に、さすがに驚いたのか冬乃の腕を掴む力が緩んでいた山崎の手を、振りほどいた。 「想いが通じ合う…

「着終わりました

「着終わりました、・・有難うございます」 二人に声をかけると、沖田が振り向き、 「そういや、土方さんが留守の時でよかったね」 笑いかけてきて。 冬乃は、その笑顔にとくんと心の臓を跳ねさせながら、おもわず釣られて「ハイ」と頷いてしまった。 土方の…

(確実だ・・・)

(確実だ・・・) 薄れてゆく視界のなか、植眉 冬乃は統真の関与を確信しながら。 「いっ・・!」 何かを、蹴った。 (なんか今、悲鳴が) 「ッてめえ!!起きろ!!」 (え?) 「起きやがれ!!!」 猛烈に叫ばれている気配に、冬乃はおそるおそる目を開け…

家に帰ると

家に帰ると、母は仕事からまだ戻っていなかった。 誰もいない家のなかを横断し、冬乃は二階へ上がってゆく。 (なんでこんなに疲れてるんだろ・・) 精神が時を行き来する異常な現象は。International School 冬乃の平成での肉体に、現実的な影響を与えてい…

沖田氏縁者。

沖田氏縁者。おそらくは、沖田の恋人・・内縁の妻、ではないかといわれている女性で。 彼女の名前さえわからない。 新選組ゆかりの寺である光縁寺の過去帳に、 大人の女性につけられる戒名と、亡くなった日付、そしてただ、沖田氏縁者、とだけあり。 そして…

日曜日の今日

日曜日の今日は師匠はいなかった。自主稽古に来ている人たちと挨拶を交わし、冬乃は竹刀を握る。 (沖田様) また、頭髮幼軟 逢えますように (どうか・・・・) 目を瞑る。 深く息を吐き。 構えた竹刀の先を見た。 心を空に。 竹刀を振りかぶり前へ踏みだし…

また睡眠薬に手が

また睡眠薬に手が出そうになる衝動を、咄嗟に抑え込む。 (いま、何か考えてたって堂々巡りでしかない) 向こうへ戻れないかもしれない恐怖に、生髮藥 のみこまれるのがオチだろう。 なにも考えないように努めるしかない。 (長い夜になりそう・・・) エア…

どんな風に唯由の気分を良

どんな風に唯由の気分を良くさせる褒め言葉を言っているのか、蓮太郎は、義母、に訊いてみた。 だが、虹子は機嫌悪そうに、 「知らないわよ、playgroup そんなこと」 と言ってくる。 「私は思ったままを言ってるだけよ。 あなたも思ったまま言いなさいよ。 …

「お前んち

「お前んち、蓮形寺家とも付き合いあるんじゃないの? 俺、彼女によく似た月子ちゃんって子を知っててさ」 「……月子?」 「あっれ~? どうしたの?期指イケメン二人い踏みで」 リラクゼーションルームには大欠伸している紗江がいた。 「いやいや、紗江さん…

「お疲れ様です

「お疲れ様です~」 と少し離れた場所から唯由たちが微笑み言ってくる。 「お疲れ様」 と返した。 そのまま彼女らは通用口から建物の中に入ろうとした。 なんとなく見送っていると、期指 一度中に入った唯由が出てきた。 立ったまま夢を見ているような心地だ…

「お前は今日から

「お前は今日から俺の愛人だ」 逃げられないよう唯由の両手をつかんだ蓮太郎は、かなり迷って額にキスしてくる。 すぐに離れた彼は強引な言葉とは裏腹にちょっと照れたような表情を見せた。 そして、照れ隠しなのか本気なのか。 「……これで幾らだ」 と訊いて…

部屋に通されて

部屋に通されて、この間と同じ場所に座ると、横にお弁当の入った鞄を置いた。 武藤はポケットから出した社員証らしき物で、部屋の解除をして部屋には入らず、お茶を入れて参りますと歩いて行ったが、社員証は首からぶら下げられていて、最初にそれは確認して…

「残念……でしたね」

「残念……でしたね」 「え? ああ、うん」 「若くして一流企業の部長になった明堂さんを見たら、美股买卖 お母様は喜ばれたでしょうから」 退院した日、萌花にここが俺の育った家だと言ったら、「へぇ」と言われた。 結婚するにあたって、萌花には俺の生い立…

「どうやったら…惚れた女子に

「どうやったら…惚れた女子に…桜に…振り向いてもらえるのか…俺にはわからない」 「…」 真っ赤な詩はそっと目を開いた。 身長差がすごくあって、singapore online stock broker 目の前は信継のみぞおちあたり。 ゆっくり首を上に上げる。 ほぼ天井を見ている…

新しい”離れ”で

新しい”離れ”でーー この日はもう遅いから、と夕餉は女中さんが運んでくれた。 詩は1人、湯を貰おうと、期貨教學 かまどに薪をくべていた。 ありがたいことに、運んでくれていた水。 ぎっちり積んでくれている薪。 1人で何でも、なんてーー 詩は思う。 1人の…

再び、太子軍を半円に取り囲

再び、太子軍を半円に取り囲みながら王女軍兵士の猛攻が始まった。先に述べたように陣形上の有利は王女軍に有る。今はまだ膠着状態であるが、時が立てば太子軍は順々に劣勢に追い込まれて行くであろう。太子軍本営では、押し込められて来る自軍をじりじりと…

無造作に歩いて来るハンベエに向かって叫んだのは

無造作に歩いて来るハンベエに向かって叫んだのは、ようやく駆け付けて来たチャードであった。覚悟しろと叫んだが、ハンベエの恐ろしさを知るチャードの強がりであった。そうでも言わなければ、配下の兵士達どころか自分自身さえ気後れしてしまいそうな、怖…

」とハンベエは少し頭を下げた

」とハンベエは少し頭を下げた。いえ、戦は今の世の習いですから。しかし、見ての通り貧しい村ですので、皆様方が満足できるほどの食べ物は提供できないと思うのですが。」「ああ、食糧の方は十分持ってきてる。自前で賄えるから心配無用だ。むしろ困ってる…

当然の事ながら

当然の事ながら、実はナーザレフのノーバー暗殺指令があった事など、ゴルゾーラとナーザレフとその配下だけの秘密であった。明かせるわけもない。まして、そこにイザベラが介在していた事など太子軍首脳ですら知らぬ事であった。 一般兵士にとっては、狐につ…

とハンベエは自分は立ったままで言った

とハンベエは自分は立ったままで言った。ヒューゴはベンチに腰掛けた。昨日からのやり取りで、この王女軍の総司令官はあまり行儀作法に拘らない質だと悟ったようである。尤も読者はハンベエ自体が丸でそんなもの受け付けない無法者だともう良く御存知だろう…

「よう生きていたんだな

「よう生きていたんだな。」「貴殿もお元気の様子。何よりです。その後の御活躍は耳にしましたよ。」ハンベエに側に来られてラーギルはガチガチ震えながら喋る。「それにしてもしても、お前さんもみょーな使者ばっかり良くやるよなあ。」「恐れ入る。」「心…

目の前にやって来たロキに、モンタは何も言わずにむしゃぶりついていた

目の前にやって来たロキに、モンタは何も言わずにむしゃぶりついていた。そうして、意味不明の嗚咽を上げて体を震わせた。ロキの表情が一辺に曇り、淀んで行く。「モンタはホウゾインさんと一緒だったはずだけど。」 傍らに立つヘルデンに、ロキが問い掛けた…

浜の真砂は尽きるとも世に何とやらの種はつきまじと言うが

はて、浜の真砂は尽きるとも世に何とやらの種はつきまじと言うが、これはどういう事でござるかな?テッフネールは疑問に思い、宿を借りた百姓家で尋ねてみた。「この辺りは、街道に無頼な者も見かけず、随分と穏やかでござるな。」「いんや、つい先頃までは…

浜の真砂は尽きるとも世に何とやらの種はつきまじと言うが

はて、浜の真砂は尽きるとも世に何とやらの種はつきまじと言うが、これはどういう事でござるかな?テッフネールは疑問に思い、宿を借りた百姓家で尋ねてみた。「この辺りは、街道に無頼な者も見かけず、随分と穏やかでござるな。」「いんや、つい先頃までは…

だが、歳月を経るに連れ

だが、歳月を経るに連れ、フデンの名声は隆々と上がる一方、テッフネールは小隊長から少しも出世する事無く、あまつさえ、『冥府の水先案内人』などという有り難くない異名を奉られる始末であった。いつしかテッフネールは狷介で人を容れぬ性質になってしま…

そんな些細な(きっとステルポイジャンはそう思うに違いない

そんな些細な(きっとステルポイジャンはそう思うに違いない)事で憎まれようとは困った酔狂人に巡り会ってしまったと困惑するに違いない。例えば、後からタゴロロームにやって来たモルフィネスはラシャレー浴場が破壊された事実を知っていたが、ハンベエに…

ハンベエが直前にい

ハンベエが直前にいた場所を例の鉄芯が空を割いて飛び去った。そのまま、元の位置にいれば、ハンベエはお陀仏だったであろう。鍛え抜かれた戦闘感覚がハンベエを救った。「あははは、躱したのかい。お前を武器で倒すのは無理のようだね。」今度はイザベラの声…

『声』は

『声』は、相変わらず全く感情のない口調で答える。ラシャレーの叱責を意に介してないふうである。「待て、五人の死骸はなんとした。」「ちゃんと始末してありますな。人知れずに。」 昨日、ハンベエ達を襲ったのは、ハンベエの想像どおり、ラシャレーの一派…