廊下は負傷者でごった返していた。

廊下は負傷者でごった返していた。

 

近藤の部屋を出て、廊下をまっすぐ行った突き当たりに新撰組の大部屋があった。

 

 

ガラッ

 

「あ……れ…」

 

いつもいつも、大きな騒動の後でも新撰組はうるさかった。

皆元気に暴れまわっていた。

 

 

それなのに、誰一人声を発していない。

死んだように動かない。

 

 

 

これが、『負け』なんだ。

 

今まではよかった。ずっと勝ち続けていたのだから。

でも、それによって初めて味わう敗北は、きつすぎる物となってしまった。

恐怖を植え付けられた。

 

 

美海と沖田は静かに入り、襖を閉めた。

 

永倉、原田は怪我はあるものの爆睡している。

 

 

きっと起きたら持ち前の明るさで皆を鼓舞してくれるのだろう。

 

美海はそう信じている。

 

 

中にいる隊士は重症ではないものの、傷でボロボロだ。

人数も大分減った。

 

 

 

ズキン。

 

 

 

また胸が痛んだ。

 

なんだか、自分は行っていない申し訳なさが出てきた。

 

美海は黙って手当てを始める。【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

「あ…。立花さん…。……すいません。俺ら…」

 

「いいから。今は体を休めていてください」

 

 

謝りの言葉なんて聞きたくない。

彼らが謝らなければならない理由なんてどこにもないのだから。

 

 

教科書で習った時は、何も思わなかったが、美海はだんだん城を、家来を、仲間を見捨てた徳川が憎くて堪らなくなった。

私は…。松平さんみたいに平等に考えられないよ。

 

 

やっぱり…。

 

 

声を掛けながらも淡々と手当てを済ませる。

流石の沖田からも笑顔が消えた。

 

「はーい。大丈夫ですか?」

 

次の隊士の顔を見上げる。

 

 

 

「………鉄くん!!」

 

市村は抜け殻のようになっていた。

 

「鉄くん?」

 

ピチピチと頬を叩く。

 

 

「先…輩?」

 

「うん!私だよ!」

 

「先……輩……」

 

 

「うん!」

 

「せん…せんぱぁぁぁあい!」

 

 

市村は美海に抱きついた。

目からは涙が溢れてる。

 

 

きっと怖かったんだろうなぁ…。

銃弾が飛び交う、死体が転がる戦場。

 

「もう大丈夫だから」

 

美海は市村の背中を叩いた。

 

「うぅっ…!」

 

その光景を悲しそうに沖田は見ていた。

 

こんな少年にはつらかったに違いない。

 

 

看病をしろとでも言って無理矢理残らさせたらよかった。

 

 

「鉄くん…」

 

「はい?」

 

涙を拭いながら市村は答えた。

 

 

「鉄くん、次からは戦場には行かない方がいいよ」

 

「私も同感です」

 

沖田も口を出した。

 

「先輩!沖田隊長!なんでですか!?」

 

 

「そんな子供を戦わせるなんて…」

 

「自分は死ぬ覚悟ぐらい出来ています!」

 

 

「え?じゃあなんで泣いて…」

 

「それは…」

 

市村は下を向いた。

「……悔しかったんです」

 

「悔しい?」

 

沖田が聞き返した。

市村は頷く。

 

 

「皆、必死に戦ってて、てきぱき動いて、自分のやることやって、攻撃にも臆しないで。でも、自分は!」

 

「自分は?」

 

 

「自分は…。永倉隊長が突っ込む中、激しい銃撃に怯みました。原田隊長が、斉藤隊長が、副長が、皆さんが必死になってる中、自分は一体何の役にたったというのでしょう…。

自分の不甲斐なさが、情けなさが、どうしようもないくらいに悔しいです……」

 

 

「鉄くん…」

 

美海は顔を伏いた。

 

 

この子はこの子なりに、悩んでるんだ…。

 

 

 

「……何を言うんだ」

 

「斉藤さん!」

 

 

後ろには斉藤が立っていた。

 

「…お前はお前にしかないもので、皆を…助けてた。

何の役にたったかって?役に立つとか立たないとかじゃないんだ。立ち向かうことに意味があるんだ。

…お前は一緒に戦ってくれたじゃないか。お前は…強かったじゃないか」

 

 

「強くなんかありません!練習しても練習しても剣術は上手くならない」

 

 

「…お前は成長してるぞ?」

 

「え?」

 

 

「もっと自分をよく見ろ。…今まで沢山努力してきて、そのままなわけがないだろう。

気付かないだけで、毎日毎日。人は成長してるんだ」

 

 

「斉藤さん…」

 

珍しく斉藤がよくしゃべるため、美海は感動した。

「美海は出来すぎで怖いなぁ!」

「美海は出来すぎで怖いなぁ!」

 

「本当に嬉しいことよ!」

 

 

「えへへ!」

 

小学一年生。

まだ少し汚い字のテストを美海は見せていた。

 

点数はもちろん100。

 

 

親は両親共々まさに『並』だったため、大いに喜んだ。

鳶が鷹を産む。

 

といったところだろうか。

 

美海は父にガシガシと頭を撫でられている。

 

美海は親に誉められるのが嬉しくて嬉しくていつだってテストをがんばった。

 

逆に周りが出来ないことを不思議に思った位だ。

 

 

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「美海ってさ!なんでそんなになんでもできるの?」

 

「なんでも?」

 

「そう!勉強もできるし、スポーツなんてズバ抜けてるし、おまけにかわいいんだよ!」

 

美海はしばらく考えこんだ。

 

 

「なんで皆は勉強がわからないの?」

 

 

一瞬その場は固まったがまた直ぐにいつものように戻った。

 

「あっはっは!天才はちがうねぇ!」

 

「うちらが普通なの!美海は違うんだよ!」

 

 

「違う?」

 

「そう!そんなふうに出来る方が珍しいの!」

 

あぁ。自分は違うんだ。

 

 

この頃からなんとなく自分と周りを心の中で別離して考えるようになった。

そんな風に過ごしながら地元の中学に進んだ。

 

両親が能天気なため、進学校に進ます意はなかったからだ。

 

 

美海は入学から既にその恵まれた容姿で注目を浴びた。

 

だがここでは幼い頃にはない嫉妬というものが生まれた。

 

 

幸い、イジメには会わなかったが徐々に人間離れした才能を開花していく美海の周りに人は減った。

 

 

テストは全て100点。

もちろん学年一位。

 

剣道部だったため、剣道の大会は優勝。

 

 

頑張れば頑張るほど離れていった。

 

 

「お前はこの学校の誇りだ!」

 

そう言う先生もただ都合良く私を利用してるだけじゃないの?

 

 

何故かそう思えてきて。

 

表情もぎこちなくなり、周りに無関心になった。

 

 

非生産な日々を過ごしていたと一番に思うのは中学時代だろう。

 

 

 

私は違うんだ。

 

 

またそう思って自分を正当化させる。

 

進学校へ行けば。きっとこんな人は沢山いる。

 

 

 

美海は東京一の進学高校に合格し、通うことになった。

 

 

「嘘…」

 

美海はふと呟いた。

 

長い艶やかな黒髪が揺れる。

校則で染髪は禁止だ。

 

 

この頃は黒髪のロングでストレートヘアーだった。

 

 

この学校はテストの結果が貼り出し式のようで、高校初の中間テスト結果を友達と眺めている。

 

入学してすぐに友達は出来た。

 

「こんなことって…」

 

美海は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

1位 赤坂 圭斗

 

 

 

 

 

 

一位が美海じゃない訳じゃない。

一位が沢山いるのだ。

もちろんその中に美海も含まれている。

 

自分も気を抜いたつもりはない。というか一位は皆満点なのだから気の抜きようがない。

 

 

「美海すごいじゃん!いいなぁ…」

 

美海の友人は憂鬱そうな顔で結果を見た。

 

 

17位 山本 佳菜

 

 

「佳菜も結果的には二位じゃん!」

 

「まあねー…」

 

友達の名前は山本 佳菜。彼女が結果的に二位というのは一問間違いだから。

要するに一位は16人いたのだ。

 

 

これは驚いたな。

 

 

美海は度肝を抜かれた気分だった。

 

天才や秀才は探せば山程いるのだ。

 

 

自分だけじゃなかった。

 

同時に不思議と安心感に包まれたのを今でも覚えている。

 

テストの成績が良いとは言えなかった人達はスポーツ推薦だ。

 

 

この驚異的な学校で美海の才能は更に開花する。枯れることをしらない。

 

「第47回剣道全国大会優勝は……海星院高等学校!!」

 

ウワァァァァァァッ──

 

 

大きな体育館にマイクで放送が入る。途端に歓声が上がった。

かなり怪しい構図だ。

かなり怪しい構図だ。

 

外にいる隊士もこの声を聞き付けて、副長…とうとう沖田隊長に手を出したか。と哀れんでいる。

 

 

「さぁ!飲め!」

 

 

「ぅわぁぁぁぁぁああ!」

 

悲鳴が聞こえた後、部屋は静まり返っていた。

 

 

「「「ゴクリ…」」」

 

怖いもの見たさに唾を呑みながらも隊士達は更に身を寄せる。

 

 

「なにしてんの?」

 

「「「うわぁぁぁぁあ!」」」

 

ドンガラガッシャーン!

 

 

「な…なに?」

 

藤堂が後ろから声を掛けたのだ。

 

驚いて思わず障子を倒してしまった。脫髮成因

 

 

「ど…どうしたんですか?」

 

中にはケロリとした沖田が布団から身を起こしていた。

 

土方を見ると手には例の『石田散薬』が握られていた。

 

 

──なぁんだ。

 

何事も怪しいことがなかったため、隊士達は拍子抜けした。

 

 

相変わらず不思議そうに藤堂は立っていた。

隊士達がざわざわと帰り始めた。がその場に残っている者が1人いた。

 

 

「どうした平助?」

 

 

残っていたのは藤堂だ。

 

 

「土方さん」

 

 

「あぁ?」

 

 

「俺…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺、伊東先生に着いていくよ」

 

 

沖田は目を見開いた。

土方は表情を変えない。

 

 

「なんで…。何言ってるんですか…?」

 

「俺、離隊して御陵衛士になるんだ。」

 

 

「離隊?そんなのでき「できるんだ」

 

藤堂は沖田の言葉に被せた。

 

沖田は土方を見る。

 

「お上から貰った立派な役職だ。切腹にはならねぇ」

 

「嘘…。試衛館から…一緒じゃないですか。何が!何が不満なんですか!?なんで!?」

 

 

「総司…ごめん…」

 

藤堂は目を合わせていられなくなり、俯いた。

 

 

「平助」

 

「……はい」

 

 

「ちゃんと悩んだ結果なんだな?」

 

「うん」

 

 

「悔いは……ないな?」

 

「………うん」

 

 

「わかった。下がっていいぞ」

 

 

藤堂はペコリと頭を下げると行ってしまった。

 

 

 

「なんだ…。土方さんはもっと反対するかと思いました」

 

「あれが平助の出した答えなんだ」

 

 

「寂しくなるなぁ…」

 

沖田の呟きは小さく空に消えた。

 

 

坂本さん…坂本さん…。

 

 

美海は坂本の行きそうな場所ばかり探していたため、今度は近場で祇園に来ていた。

 

 

坂本さん坂本さん…。

 

 

「すいません。土佐弁のごっつい人見ませんでしたか?」

 

美海は近くの和菓子屋に入り、話を聞く。

 

 

「悪いねぇ。見てないわぁ」

 

 

「ありがとうございます。あ。この干菓子1つ下さい」

 

「はいはい。毎度おおきに」

 

 

カランカラン

 

 

「はぁー―…そう簡単に見つからないよね。あの人一応重要人物だしね」

 

何度も店を入っては出て、入っては出ての繰り返しだ。

 

 

「─────!」

 

ん?角から騒ぎ?

 

行くか…。

 

 

かれこれ騒ぎも今日だけで既に4件だ。

 

なんだか放っておけず、ついつい助けに行ってしまう。

 

 

──祇園荒れてるなぁ。

 

角を曲がろうとしたその時だった。

 

 

「だーかーら!何度言ったらわかるぜよ!おまんが悪い!」

 

 

まさか…!

 

懐かしい土佐弁。あの声。

 

美海は目を輝かせて飛び出した。

「なんやねん。お前がぶつかって来たから兄貴は肩の骨折ったんやんけ」

 

 

「いた。いたたた!金払えや!」

 

 

「そっちがぶつかってきたんじゃろが!」

 

 

 

え?何あの人絡まれちゃってんの?

 

 

美海の目の前には浪士二人に絡まれる坂本がいた。

 

 

「お客様!他でやってください!」

 

店主も店の目の前でやられて迷惑そうだ。

 

 

「すいませんすいません。行きますよ」

 

美海は飛び出すと坂本の腕を引っ張った。

 

 

「ん?みーなムグゥ!」

 

坂本は目を輝かせて叫んだが美海が口を塞いだ。

 

 

「何絡まれてんですか。行きますよ」

美海がこそこそ話す。

 

 

 

 

「ちょっと待ちぃや。まだ話は終わっとらん」

 

 

美海は後ろを振り返ってため息を着いた。

 

「肩。見せてください」

 

「そ…そんなんお前に見せたって…」

 

 

「私は医者です」

 

 

 

 

「くっ…。あー!なんやねん!いちいち!」

 

シャッ

 

相手は刀を抜いた。

 

 

「なんやねんはこっちの台詞です。屯所まで来たいんですか?」

 

 

「は?何言うとんじゃ」

 

「意味わからへん」

 

 

「すみません。遅れましたが新撰組一番隊隊長補佐の立花です」

 

 

「「え…」」

浪士は固まった。

美海は松本と山崎を含め

美海は松本と山崎を含め、今後の方針を話し合い、その場を後にした。

 

 

「はぁー…どうしよう…」

 

次は土方の部屋だ。

 

 

 

コンコン…

 

 

「土方さ「あー―…やられた」

 

 

1人でしゃべってる?

 

美海はその場で固まり、耳を澄ませた。

 

 

「あいつ絶対何か企んでいやがる」

 

 

「歳。あいつはないだろう。先生と言いなさい。伊東先生は何も企んじゃいないよ」

 

 

あぁ。伊東先生のことか。近藤さんとしゃべってるんだ。

 

 

「あいつ…せんせーは胡散臭せぇんだよ。あいつ…乗っ取るんじゃないか?」

 

 

「歳!いい加減にしろ!伊東先生は新撰組のために尽くすと俺に言って加盟したんだ」

 

 

「だから何でそう疑わない?」生髮帽

 

 

 

 

 

「仲間だからだ」

 

 

 

 

 

「…勝手にしろ!田舎侍!」

 

ガタッ

 

 

──あ。来る。

 

ドスドスと地面を踏みしめる音がする。

 

 

ガラッ

 

「「あ」」

 

結局土方と目が合い、その場で固まった。

 

 

「ど…どうも…」

 

 

美海が声を掛けると土方はスパンと戸を閉め、またズカズカと歩き出した。

 

部屋を覗くと、取り残された近藤が悲しそうな顔をして座っていた。

 

 

「お前も田舎侍だろ…」

 

美海は土方を追いかけた。

 

 

「あ…あのー―…?」

 

美海は低姿勢で土方に話しかける。

 

 

「あ゛ぁ?」

 

振り返った土方はギロリと美海を睨んだ。

 

 

「ひぃぃぃい!すいません!」

 

日野のバラガキはすこぶる機嫌が悪そうだ。

 

美海はこの時ばかりは土方に声を掛けたくなかった。

いっそ逃げてしまおうか。

 

「なんだ?俺になんか用か?」

 

更に素っ気なく返される。

 

「あ…あのー…なんで近藤さんとケンカしたのかなぁー…」

 

美海はチラリと土方を見たとたんその鬼のような形相に語尾が小さくなっていった。

 

 

「なー―んて…。ははは…。すいませんすいません」

 

美海はひたすら頭を下げた。

 

 

「伊東」

 

 

美海はふと顔を上げた。

 

 

「伊東が隊を出る」

 

切腹じゃないですか。馬鹿ですね」

 

美海は目を見開いた。

 

 

「違うんだ。離隊するんだ」

 

「だから切……あれ?離隊?脱走じゃなく?」

 

 

「あいつ出たら切腹なのを分かってて、離隊を申請してきたんだ」

 

 

「というと?」

 

 

「薩摩の動向探索、御陵警備を理由に離隊すると行ったんだ。分かれるだけだから切腹にはならん」

 

 

伊東甲子太郎……賢い…。

「名は御陵衛士というらしい。いろんな隊士に誘いを掛けているようだ。一人一人な」

 

 

「一人一人?いったい何故?」

 

「さぁな。あいつの考えることなんてわかりたくもねぇわ。何人離隊するかは時間の問題だな」

 

 

 

「そうなんですかぁ…」

 

私は誘われてないんですけどね。

 

 

もちろん誘われても行かないのだが、仲間外れのようで美海はなんだか複雑な気持ちになった。

 

 

 

「あ!」

 

思わず本命の用を忘れて去るところであった。

 

 

「もうご存知だとはおもいますが、沖田さんは労咳です」

 

 

土方はピクリと眉を動かした。

 

「ついさっき、血を吐きました」

 

 

「なんで俺に?」

 

 

「土方さんには報告しなければならないと思ったからです」

 

 

「………そうか」

 

 

「安心してください。私が治しますから!」

 

美海はにっこり笑った。

 

 

「……あぁ」

土方も微笑んだ。

 

 

こそこそしてたのは総司の病を治すためだったのか?

 

 

「じゃ!行くところがあるんで!」

 

 

「待て!」

 

 

美海は振り返った。

 

 

「無理はするな」

 

 

「はい!」

 

再び美海は歩き出した。

 

 

それから美海は沖田に外出禁止令を出して、屯所を出た。

 

 

坂本を探しに行ったのだ。

 

しかし、前回のように上手くは見つからず、来る日も来る日も出掛けていた。

 

 

「ちょ!土方さん!止めてください!」

 

 

「なんだよ。仕方ねぇだろ」

 

沖田は部屋で土方に跨がられていた。

 

 

 

「あ!嫌!止めてくださいって!」

 

乱れた布団に涙目な沖田の両手を上で押さえて跨がる土方。

美海は気が付くと沖田も永倉も原田もおらず

美海は気が付くと沖田も永倉も原田もおらず、藤堂は講義を受けていて構ってくれる相手がいなかった。

 

 

仕方なく土方の部屋に言って沖田のことを相談したのだが、軽く流された。

 

土方もそろそろめんどくさいようだ。

 

 

 

あーあ。山南さんなら聞いてくれるのになー。

 

 

 

結局暇で仕方がなかったため、珍しく稽古に出向いたり、女中に話掛けたり、一番隊の隊士にちょっかいを掛けに行ったりしていた。

 

ガラララ

 

再びブラブラ歩いていると講義の部屋が開き、中から藤堂が出てきた。

 

 

「あ!と…」

 

 

スッ…

 

 

声を掛けようとしたのだが、藤堂は定まらない視点のまま通り過ぎて行った。

 

 

「?」

 

美海は不思議そうに振り返った。

 

 

 

疲れてるのかな?

 

「あ!美海さーん!」

 

 

パタパタと沖田が走ってくる。

 

「沖田さん!どこに行ってたんですか?私暇で暇で…」

 

 

「男同士で語りたいこともあるんですよ」

 

結婚のことか?

私には言えないのかよ!artas植髮

 

 

美海はプゥッと頬を膨らました。

 

 

「それより!」

 

「それよりなんですか?」美海はいじけたように呟いた。

 

「すいませんって!今度は美海さん誘いますから!」

拗ねてる美海さん…

 

そんなあなたもかわいいです。

 

 

「で!手出してください!」

 

何かくれるのか?と美海は手を差し出した。

「あ」

 

「?」

 

 

どの指なんだろう?

 

指輪って。

 

 

沖田は美海の右手を持ったまま固まっている。

 

 

実は沖田。美海に指輪をプレゼントしようと、指の太さを測りたかったのだが、どの指なのかわからない。

 

根本的に結婚指輪は左手である。

 

 

左手の薬指にしなければならないのだがわからない。全くわからない。

 

 

「んー―…」

 

まさかここで聞けない。怪しすぎる。

 

 

沖田はしばらく考え込んだあと、きっと人差し指だと信じ込み、美海の人差し指に紐を巻いた。

 

 

「なんですか?」

美海は怪訝な顔をする。

 

 

「いやちょっと…。よし」

 

沖田は測り終えたようだ。

 

「ありがとうございます!じゃ!」

 

 

「え?ちょっと!どこ行くんですか?」

 

 

「内緒です!」

沖田はせかせかと去ってしまった。

 

 

 

なんなんだ?いったい。

 

 

ポン

 

「よぉ美海!」

 

「永倉さん!原田さん!」

 

振り向くと永倉が美海の肩を叩いていた。

 

「美海!総司は結婚はしねぇ!」

 

 

「え?なんでわかったんですか?」

 

「美海ぃ!良かったなぁ!」

 

永倉もニヤニヤしながら見てくる。

 

 

沖田は一先ず部屋に戻ると箱を取り出した。

 

 

中にはつい最近折れた菊一文字の刃が入っている。

 

 

これを溶かして貰おう。

 

いつも行ってる鍛冶屋ならやらせてくれるかな?

 

 

あ。

 

 

部屋を出ようとすると白いものに目が止まる。

 

 

ますく……。

 

“これをつけなきゃ外出させません!”

 

 

「仕方ないなぁ…」

 

 

沖田はマスクを持つと部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌々ながらマスクを着けて町を歩く。

 

息がしづらい。きもちわるい。

 

 

 

なにより痛い程視線が…

 

 

現代ではマスクを着けて町を歩くのはもはや一般化されているが、この時代では怪しすぎる。

 

 

「早く鍛冶屋へ行こう」

 

沖田は足早に鍛冶屋へと向かった。

 

 

 

ガラ

 

「お!総司じゃねぇか!」

「お久しぶりです!」

 

鍛冶屋に着くと店主が笑顔で迎え入れた。

 

「なんだい?また刀折ったのかい?」

 

「いえ。実はこの前の刃で………」

沖田は自分の考えを話した。

 

 

 

「よくわかんねぇが。総司の頼みだ。好きに釜戸使ってくれ!」

 

「ありがとうございます!」

沖田は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「藤堂くん。話があるんだ」

 

「はい」

その頃、藤堂は伊東に呼び出されていた。

 

更に屯所外では大変な事が起こっていた。

 

 

薩摩藩士の小松邸。

 

 

ここではひっそりと会談が行われていた。

 

 

 

「よし!これでよろしく頼む。」

 

「わかった。これからは協力しよう」

 

手を握りあっているのは、桂 小五郎と西郷 隆盛だ。

「私は美海さんに想いを告げていい

「私は美海さんに想いを告げていいのでしょうか?」

 

 

「「はぁ!?」」

 

「いいってなんだよ!駄目とかあんのか?」

 

 

原田と永倉は心底驚いた顔をしている。

 

 

「だって…知っているでしょう?私は……私は……」

 

 

二人は黙って次の言葉を待つ。

 

 

 

「私は…いついなくなるかわからないんですよ?」

 

この世から。

 

 

永倉と原田は目を見開いて沖田を見た。

 

沖田は相変わらず俯いている。植髮成功率

 

 

 

そうか。この少年には。この優しい少年にはこんなに大きく厚い壁が隔たっているのか。

 

 

なんだか哀しい気持ちになる。

 

言いたくても言えない。か。

 

 

「先に置いて逝くんですよ。ずっと彼女を守ってあげられない。ずっと?いや。今もです」

 

 

「そんなこと…!」

 

言葉が続かない。

気の効いた言葉を見つけられない自分に腹がたつ。

 

永倉は悔しそうな顔をした。剣を使う者としてその苦痛はなんとなくわかる。けれど言葉が見つからない。

 

「知っていますか?」

沖田が言った。

「美海さんが倒れたのって多分私のせいなんですよ」

 

 

「え?」

 

 

「実は、美海さんは未来の医術を使って私の病を治してくれようとしているんです」

 

 

「そんなことしてるなんて初めて聞いたぞ…」

 

 

労咳…治るのか…。

 

 

「絶対治るかはわからないんです。ですが、美海さんは最善を尽くしてくれてるんです。夜中まで部屋に戻らず、食事も摂らず…。松本先生も手伝ってくれているようなんですが、やっぱり未来の医術を知っているのは美海さんだけだから、一人で背負い込んでいるんです。疲労は絶対溜まってるはずなのに」

 

 

「全く顔にも出さなかったじゃねぇか…。あのちびっこ…。無理しやがって」

 

「逆に好きな人を苦しめてるんですよ?笑っちゃいますよね。男として情けないです」

 

沖田はやるせない顔で笑った。

 

 

 

そんな中、原田が口を開いた。

 

「美海はさぁ…。苦しいとか思ってないんじゃないか?自分より人のあいつだぜ?確かに辛いかもしれねぇが、逆に総司を助けられない方がもっともっとあいつには苦しいんじゃないか?」

 

 

「左ノ…」

 

 

「でも!私は…死ぬん「死ぬって」

 

「死ぬって言われたのか?」

 

 

沖田は静かに首を横に振る。

 

「何があっても絶対に救うって…」

 

「じゃあお前が一番にそれを信用してやるべきなんじゃねぇのか?」

 

 

三人は黙っている。

 

 

原田と永倉は沖田の返事を只々待つだけだ。

 

 

どうしてあんなにふわふわした恋愛話からこんな暗い話に一変したのだろう。

 

 

 

だが、沖田はそれを気にして未だに想いを伝えきれずにいた。

 

良い機会だったかもしれない。これで心にケリがつく。

 

 

「そうですよね……。私…弱気になってました…。そうですよね!私が信じなきゃ!」

 

 

 

「そうだ!それでこそ男だぁぁぁぁぁあ!」

 

原田は馬鹿デカイ声で叫びながら沖田に抱き着く。

 

 

 

 

 

「なにしてんだおめぇら。んな仲か?」

 

 

後ろを振り向くと土方が怪訝そうな顔をして見ていた。

 

 

「「「え?」」」

 

 

「わわわ!ちがいますよ!」

 

沖田は原田を引き剥がした。

 

 

「なんだよぉ!そうじぃ!俺らの仲だろ~!」

 

 

原田と永倉はニヤニヤしながら近寄った。

 

 

「な…ちょ!原田さ…なが…!」

 

 

沖田は大男二人に群がられ、息苦しそうだ。

 

 

 

「きもっ…」

現代の言葉は新撰組内で着々と定着している。

 

 

土方はそう吐き捨てて去っていった。

 

 

心の内を話してなんだか原田、永倉、沖田の仲は以前よりも縮まったような気がする。

 

 

原田、永倉は相変わらず沖田にべたべたしている。

 

 

それからしばらく沖田のノロケ話を聞いていたのだが、沖田のある提案で場は更に盛り上がった。

 

 

「まじかぁ!いいじゃねぇか!」

 

 

「でしょ!?ですよね!?普通よりいいですよね!?」

 

 

「あぁ!流石の美海もポロリだぜ!んでそのまま布団に誘い込め!」

 

永倉がニカッと笑いながら言った。

 

 

「ば!そんないやらしいこと私はしませんよ!」

 

 

 

「お前!馬鹿っていいかけただろ!」

 

永倉が飛び付こうとしたが沖田はヒラリとかわした。

 

「とにかく!今回はありがとうございました!私…がんばります!」

 

 

「おーう」

 

「早速準備やらいろいろしますね!」

 

 

沖田はにっこり笑うと立ち去った。

 

「総司ってさぁ」

 

 

「ん?」

 

「男から見てもかっこいいよな」

原田が呟いた。

 

 

「いや。お前も充分かっこいいよ」

永倉が言った。

 

 

 

「え?新八がかっこいいだろ」

 

 

「は?左ノが」

「新八が」

「左ノが」

 

 

「なにこの誉め合い!きも!」

 

 

「ははははは!」

 

二人はまた笑った。

「いえね。なんか沖田さんが結婚

「いえね。なんか沖田さんが結婚するみたいで…」

 

原田はじーっと美海の胸元を見ている。

 

 

「原田さん?」

 

 

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原田急にハッと顔を上げると手で顔を叩いた。

 

俺どこみてんだよ!その辺の変態じゃねぇか!危ない危ない!

 

しかもないし!(胸が)

 

 

「ななななんだ?」

 

 

「いや。沖田さんが結婚」

 

美海も話を飛躍しすぎである。結婚の仕方を聞いただけで結婚をするとか別に言っていない。

 

沖田はどういうつもりなのかはわからないが。

 

 

「けっこぉぉぉぉぉん!?」

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原田は飛び上がった。

「はい…。嫌だなぁ。沖田さん結婚するんでしょうか!?」

 

美海は俯く。

 

 

「なんで美海が焦るんだよ?」

 

 

「い…いや!別に!心配なだけですよ!」

 

美海はバッと顔を上げ、手を左右に必死に振っている。

 

 

 

「ははぁん…なるほどね」

 

原田は美海を見ながら頷いた。

 

 

「な…なんですか!?」

 

 

「いっやぁ!べっつに~!」

 

原田はニヤニヤしながら美海を見た。

 

 

 

なるほど。こりゃ美海は総司が好きだな。

 

考えて見りゃあ接点がかなりあるしな。

 

 

原田は人様の色恋沙汰には鋭い。普段は馬鹿だが何故かこういう無駄な能はある。

 

だが原田は突然首を傾げて顎に指を持っていった。

 

「何一人百面相してるんですか」

 

 

原田は美海の言葉は無視してひたすら考え込む。

 

 

でも待てよ?総司は美海をどう思ってるんだ?

結婚とか言ってる時点で脈なしか?

 

 

似合ってるんだがなぁ。

 

 

「美海」

 

「はい?」

 

 

「相手しか気持ちはわかんねぇよ。絶対無理なんてねぇんだ。後から振り向くこともある。当たって砕けろー!」

 

なんだか良いことを言っていたのだがやはり馬鹿なため話が矛盾している。

 

 

「?」

美海はわけがわからないといった様子で見ていた。

美海はその後も原田に訳のわからない慰めを貰い、その場を後にした。

 

「なんだったんだろ?」

 

 

原田さんもまさか…私が男色だと思ってんのかな?

 

 

美海は何人かの幹部に素性がバレていることに全く気づいていない。

 

 

 

「───は───で攘夷とは───。幕府のために───」

 

 

またやってる。

 

美海は歩きながら声のする方をチラリと見る。

 

 

伊東が講演会を開いているのだ。

沢山の隊士が話を聞いている。

 

 

やはり才色兼備なため人が集まる。この頃は更に勢力を高めているように思える。

 

 

“いつか反逆してくんじゃねぇか?”

 

土方がそう言っていた。

 

 

どうかなぁ?

 

 

 

あ。藤堂さんだ。

 

中には上の空な藤堂がいた。

 

最近様子がおかしい。

原田や永倉とも一緒にいないことが多い。

 

 

悩んでるのかな?

いや。でもあの藤堂さんだしな。

悩むなんてあり得ない。

 

 

 

それでも何故かその顔が美海の頭に焼き付いて離れなかった。

「しんぱーち!」

 

「あ?」

 

その頃原田は井戸で顔を洗う胴着姿の永倉を見つけて呼び止めていた。

 

額からは汗が流れている。相当練習したのだろう。

 

 

「俺は疲れてんだ。頼み事なら断るぜ」

 

 

 

「実はさぁ!美海と総司が…」

 

 

今までのいきさつを永倉に話す。

 

永倉はみるみる内に疲れはてた顔色を明るくさせた。

 

 

 

「まじかよ!でも少し残念だ。美海は軽く狙ってたのになぁ」

 

永倉の言葉に原田は目を見開いた。

 

 

「お前手ぇ出すの早えなぁ!」

 

「左ノみてぇに奥さんがいたらなぁ。だって美海は美人、強い、賢い、誰が見ても良い女だろ?」

 

 

 

「確かに。ちょっと勇ましいけどな」

 

二人は苦笑いした。

 

 

「平助は?」

永倉がふと聞く。

 

 

「平助は御講義を受けるんだとよ。まぁ平助は元々文武両道だったけどよぉ、最近勉強し過ぎじゃね?」

 

「うーん…」

 

永倉は小さく唸った。

 

 

「あいつなんか悩んでんのかな?なんか違うんだ」

 

永倉は深刻そうな顔をした。

 

「やっぱり?思うよな!?」

原田も頷いた。

 

 

「でさぁ!とりあえず総司にちょっかいだしに行かねぇ?」

原田が一気に話題を変えた。

 

 

 

永倉はニヤリと笑った。

 

「面白そうじゃん」