それだけ本気だったにも関わらずこの結

それだけ本気だったにも関わらずこの結末。本人はすでに飄々としてるがその本心は如何に。

 

 

「俺は三津さんが可哀想で。向こうで結婚伝えた時一瞬気を失ったんですよね。」

 

 

赤禰はそれが容易に想像できた。赤禰でも報告を受けた時に一瞬目の前が真っ白になって,何言ってんだ?このオッサン。と思ったぐらいだから,当事者の三津はそれ以上の衝撃だったに違いない。

 

 

「そこからかなり情緒不安定みたいで。受け入れようとしてる反面,木戸さんに攻撃的になったり。本人はそんな事したくないけど気持ちがついてこなくて,頭と心がちぐはぐ状態だって。」

 

 

そうなるのは分かるが攻撃の仕方が文やすみに似てきたのは戴けないと伊藤は唸った。

 

 

「あー。でも仕方ない。これから入江に安心させてもらえたら自然と元に戻るんやない?」 植髮成功率

 

 

後は入江がどこまで桂との条件を守るかだなと言った。多分あれは,それ駄目なんじゃないの?ぐらいの際どい所を攻めてくると赤禰は予想した。

赤禰と伊藤はそれで三津が悩んで苦しまないかが心配だった。

 

 

 

 

「荷物そんな増えとらんね。」

 

 

入江はてきぱきと手際良く風呂敷を広げていった。三津はその理由が分かっていたから一つだけは絶対に触らせなかった。入江は満面の笑みでそれ貸してと手を伸ばしたが三津はその手を叩き落とした。

 

 

「後は自分でやります。」

 

 

「全部見せ合った仲やのに。」

 

 

三津はにんまり笑う入江の額を叩いた。今日もペちんといい音がした。

 

 

「ふふっ三津が帰って来た。いつも通り出来そう?」

 

 

入江は三津と向かい合って両手を取って握った。三津は握り返して小さく頷いた。入江が変わらぬ接し方をしてくれるから,自然と三津もそう出来る気がする。大丈夫だと思えた。

 

 

「そしたら今日はゆっくり休み。おやすみ。」

 

 

「おやすみなさい。」

 

 

笑顔の三津を見て入江はそっと手を離した。でも名残惜しくてしばらく微笑み合いながら佇んでいた。

このままじゃ埒が明かないから入江が潔く部屋を出ようとした時,背中に衝撃が来た。

お腹に目を落とせば細い腕が絡みついている。背中から三津が抱きついてきた。

 

 

入江は踏み出した足を引っ込めて障子を閉めた。振り返って三津の顔を両手で挟み,唇を重ねた。三津もそれに応えるように入江の首の後ろに手を回した。

 

 

「せっかく我慢したのに。」

 

 

「ごめんなさい。ぎゅうってしてもらいたかったんやけど……。」

 

 

私も我慢出来なかったと,申し訳なさそうに眉尻を下げて微笑んだ。

入江はこれ以上居ると抑えられなくなるから戻るねと部屋を出た。少し廊下を歩いた所で溜息をつきながらその場にしゃがみ込んだ。

 

 

『初日からこれはいけんな……。』

 

 

必死に求めてきた三津を思い出すと嫌でもにやける。入江は自分の頬をぺちぺち叩いてにやける顔を引き締めた。それから夜だけ居候させてもらう赤禰の部屋に戻ったが,

 

 

「……その顔木戸さんの前でしたら絶対いけん。」

 

 

赤禰はバレバレやぞと半目で睨んだ。早速約束破ってどうすると溜息をついた。

 

 

「だって三津が可愛いんやけぇ仕方ないっちゃ。」

 

 

入江は両手で顔を覆って畳の上を転げまわった。やっぱり三津は桂より自分を好きなのだと確認して歓びが抑えきれない。

 

 

「でもお前適切な距離感保たんと三津さんが潰れるぞ。」

 

 

「分かっちょる。でも今日は許してほしいわ……。泣きながらぎゅうしてって手ぇ伸ばしてきた時我慢しただけでも偉くない?」

 

 

「泣きながらあんなんされたらな……。」

 

 

「やのにさっきは部屋出ようとしたら後ろから抱きついてきたそ。これはもう口づけぐらいしちゃらんとって思ったほっちゃ……。明日から気をつける……。」

 

 

三津とずっと一緒に居る為にはぐっと耐え忍ばなければならない。

 

 

『あー。あの時抱かんかったら堪えれとったんかなぁ……。』