そんな事を考えながらしげしげと

そんな事を考えながらしげしげと見つめていると今度ははっと目を見開いた。

 

 

「そうや傷!」

 

 

三津は思い出したと言わんばかりに豪快に左の袖を捲り上げた。

 

 

それには桂も苦笑い。肺癌早期治療方法多

 

 

「恥ずかしいから止めて。」

 

 

くすくす笑って袖を下ろすと三津は顔を真っ赤にして俯いた。

 

 

三津の感情を素直に表すところや,素朴な容姿が桂には新鮮だった。

 

 

京の町が華やかなだけに余計にその存在感を感じる。

 

 

「君のおかげで治りがいいんだ。ちょうどそのお礼をしようと思ってたんだ。」

 

 

それを聞いて三津が勢いよく顔を上げた。

 

 

「お礼なんていいですよっ!」

 

 

お礼ならしてもらった。さっき酔っ払いから助けてもらった。

 

 

間に合ってますと首をぶんぶん横に振っていると桂の両手が伸びてきてしっかりと顔を挟まれた。

 

 

「私の気が済まないんだ。」

 

 

にこやかに微笑んで三津と目線を合わせて屈み

 

 

「だから……ね?」

 

 

顔を覗き込んでさらににっこりと微笑んだ。夜とは違い一段とよく見える色男の微笑に三津の心臓は激しく脈を打つ。

 

 

しかも顔は固定されご丁寧に目線まで合わせて下さって…。

 

 

どうしたらいいか分からずただ笑うしかない。

 

 

すると桂は頬から手を離しごそごそと懐を探り始めた。

 

 

「これどうぞ。」

 

 

小さな包みを取り出して三津に手渡した。

 

 

手渡すと言うより強引にしっかりと握らせて満足げに微笑んだ。

 

 

「あ…有難うございます。」

 

 

本当に受け取っていいものか…。

 

 

まじまじと手のひらの上の包みを見つめた。

 

 

「では家まで送ろうか。」

 

 

桂は三津の頭をぽんぽんと軽く叩いて踵を返した。

 

 

「あっ…はい!」

 

 

貰った包みを慌てて胸元にしまい,置いて行かれない様に桂の背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

『壬生狼に追っかけられた人とは思えんなぁ。』

 

 

堂々と歩く後ろ姿を見つめながら数歩後ろをついて行く。

 

 

傷は良くなったとはいえ,もしここで壬生狼に出くわしてしまったら…。

 

 

最悪の事態を想像してしまい,小さな体は震え上がった。

 

 

折角無事でいるのに自分を送り届ける道中で何かあってはいかん。

 

 

「こっ…ここまで来たら帰れますからっ!」

 

 

咄嗟に桂の着物を掴んでその足を止めさせた。

 

 

「そうかい?じゃあ今日はここで。」

 

 

桂が素直に応じてくれた事にほっとして着物から手を離した。

 

 

「知らない人にはついて行かずに真っすぐ帰るんだよ?」

 

 

まさかそんな心配をされるとは。

 

 

「もう十八なんで流石にその辺は心得てます。桂さんこそ狩られないように気をつけて下さいね!」

 

 

こっちも心配してるんだぞと最後の言葉を強調した。

 

 

そして色々と有難うございましたと頭を下げてから甘味屋を目指して歩き始めた。

 

 

「そうか…十八か…。」

 

 

振り返らず真っすぐ歩いて行く背中を見送りながら,一人でくすりと笑みを零した。

 

 

『随分と大きな迷子がいたもんだ。』

 

 

三津が見えなくなってから桂も帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。」

 

 

何とか甘味屋まで辿り着いた三津を満面の笑みを浮かべたトキが出迎えた。

 

 

「お帰り。」

 

 

一家の主である功助までも,同じように満面の笑みで出迎えてくれた。

 

 

『何かある…。』

 

 

三津は何かを察知した。

 

 

根拠はない。あくまでも三津の勘が働いた。

 

 

「遅くなってごめんな。すぐ夕餉の支度するから!」

 

 

ここはひとまず逃げるべし。あたふたしながら台所へと転がり込んだ。夜とは違い一段とよく見える色男の微笑に三津の心臓は激しく脈を打つ。

 

 

しかも顔は固定されご丁寧に目線まで合わせて下さって…。

 

 

どうしたらいいか分からずただ笑うしかない。

 

 

すると桂は頬から手を離しごそごそと懐を探り始めた。

 

 

「これどうぞ。」

 

 

小さな包みを取り出して三津に手渡した。

 

 

手渡すと言うより強引にしっかりと握らせて満足げに微笑んだ。

 

 

「あ…有難うございます。」

 

 

本当に受け取っていいものか…。

 

 

まじまじと手のひらの上の包みを見つめた。

 

 

「では家まで送ろうか。」

 

 

桂は三津の頭をぽんぽんと軽く叩いて踵を返した。

 

 

「あっ…はい!」

 

 

貰った包みを慌てて胸元にしまい,置いて行かれない様に桂の背中を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

『壬生狼に追っかけられた人とは思えんなぁ。』

 

 

堂々と歩く後ろ姿を見つめながら数歩後ろをついて行く。

 

 

傷は良くなったとはいえ,もしここで壬生狼に出くわしてしまったら…。