「それでおじちゃんとおばちゃ

「それでおじちゃんとおばちゃんは全部話したん?」

 

 

総司が黙って頷くと,三津は困ったような笑顔を見せた。

 

 

「もぉ,お喋りやねんから。帰ったらお説教やな。」

 

 

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昔の事を知らない所で勝手に話されてたら。」

 

 

しかも三津にとって凄く凄く辛い事。

でも三津は静かに首を横に振った。

 

 

「それより私が毎晩魘されてたの何で沖田さんが知ってるん?」

 

 

そっちの方がびっくりだってやっぱり笑ってみせた。

それを見て総司の方が複雑な表情を浮かべた。

 

 

「みんな知ってます。三津さん毎晩悲鳴を上げるから。」

 

 

「え!?そうなん!?早よ言ってよ,全然気付かんかったし!」

 

 

嫌な夢だとは思っていたけど,毎晩見せられるその辛さが,まさか悲鳴となって口から出ていたなんて。

 

 

「それだけ辛い思いをされたんでしょ?」

 

 

だから人が斬られる事に人一倍敏感で,血を見るのが怖い。

きっと刀を振るう人が許せないはず。

 

 

「…そうやね,残される側は辛いなぁ。」

 

 

『また笑った…。』

 

 

心から笑ってない,貼り付けたような笑顔。こんなの三津じゃない。

 

 

「そんな笑顔…三津さんらしくない…。どうして無理してまで笑うんです?」

 

 

辛い時は甘えればいいのに,弱音を吐かなければ,頼ってもくれない。

 

 

「約束したから…。じゃないと怒られてまうし。」

 

 

冗談っぽく言いながら,三津は肩をすくめて見せる。

どんな時も笑顔を作る癖をつけた。

勝手に顔が笑うのだからこれが普通なんだ。

 

 

すると意を決した総司が三津へと手を伸ばした。伸びてくる手を三津は避けなかった。

何をするのだろうかと不思議そうに総司を見ていた。

 

 

「この顔はお面ですか?」

 

 

総司の両手は三津の顔を挟み,頬を揉みほぐした。

ぽかんとする顔のギリギリまで近付いた。

 

 

「全然感情がない。笑ってるふりしてるだけだ。

お面をつけて全て隠してるだけじゃないですか!

約束ってなんです?無理して笑う事ですか?

誰とそんな約束したんです?それも三津さんを苦しめてる要因の一つじゃないんですか?」

 

 

息継ぎも忘れて言いたい事を一気にぶつけた。

三津の顔を押さえる手に震えが走る。

 

 

「嫌やなぁ,無理なんてしてへんから。

沖田さんの早口が凄くてびっくりしたし。」

 

 

クスクス笑って総司の手をそっと掴んで外そうとしたが,

 

 

「そうやって話を反らすのも許しませんよ?」

 

 

逆に総司が三津の手首を取り,痛くない程度に力を入れた。

 

 

「私とも約束して下さい。無理して笑わないと。

辛い時は辛いと言って,泣きたい時には泣いて下さい。私の胸なら貸しますから…。」

 

 

真っすぐに三津の目を見て伝えるつもりだったのに,最後の方になると自分でも恥ずかしくなってきて目を伏せてしまった。

 

 

「そんな甘やかすような事言ったら土方さんに怒られますよ?

おじちゃん達の所でも散々甘えてたんやし…。

それに,沖田さんが思う程弱い子ちゃうし。」

 

 

三津はにっと笑って総司の顔を覗き込んだ。

急に顔を寄せられ,総司がのけぞり手が緩んだ隙に三津は拘束から逃れた。

 

 

「でもそう言ってもらえて嬉しい。ありがとう。

もしそんな時は胸貸してね!」

 

 

じゃあ!と片手を上げて部屋からも逃げ出した。

 

 

「あ!」

 

 

まんまとはぐらかされてしまった。

四つん這いになってがっくりとうなだれた。

 

 

「何やってるんだ私は…。」

 

 

力になるどころか三津の本心さえ引き出せない。

三津を呪縛から解放してあげたかったのに。

 

 

『私がどうにかなりそうだ…。あの“ありがとう”はズルい…。』

 

 

最後の最後で本物の笑顔を見せた。

三津に触れただけでおかしくなった心臓が余計に早鐘を打つ。

 

 

のそのそ体を起こし,胡座をかいて三津に触れた両手を見つめた。

 

 

「三津さんにべったり触っちゃった…。」

 

 

三津の頬の温もりと柔らかな肌の感覚がまだある。

 

 

『やっぱり三津さんの特別なイイ人になりたいよ…。』