思えば、相棒もこっちにきた当初は、子どもらに抱きつかれてもみくちゃにされるたびに戸惑いまくっていた。
なぜなら、子どもに慣れていないからである。
それまで、子どもと触れ合う機会はほぼほぼなかった。
幾度か行方不明児を捜索し、顯赫植髮 発見したことはある。しかし、現代っ子はじつにクールである。ドラマや小説など創作の一場面のように、相棒に抱きついて「ありがとう」とか「さみしかった」とか、泣き叫んだりっていう子はまずいない。みな、冷めたようなで保護されてゆく。
そういう子たちは、親兄弟など肉親と再会しても塩対応なんだろう。もちろん、みんながみんなそうではない。しかし、ドラマや小説のような感動はないような気がする。それがいいとか悪いというつもりは毛頭ない。
無事だったのだから、それでいい。それが、なににもおいて一番だからである。
だが、心情的にはなんだかなーって気もしたものである。
もっとも、相棒は、そんなことは気にならないようだが。
それにくらべれば、こっちの子たちの相棒にたいする愛情はぱねぇ。おれとしては、うれしいかぎりである。その純粋で無限大の愛情を、相棒も感じている。だからこそ、子どもらにたいしてやさしいし、相棒なりに応えてもいる。
それで、その子どもらの愛情であるが、わずかでもおれにあたえてくれれば、もういうことなしなのであるが……。
子どもらは、ひとしきり相棒と感動の再会をすませた。熱烈なハグから相棒を解放すると、そこでやっとの存在に気がつをみあわせる。それから、うなずいた。
おお、やっと「主計さん」って叫びながら、おれのところにきて……。
「ぽち先生っ!」
その一言が、おれの心をさらにえぐったのはいうまでもない。
叫んだ瞬間には、二人とも俊春に抱きついている。
子どもらまで、ぽちって呼んでるのが草だ。しかも、ぽちに先生ってつけてるし。
「ぽち先生、会いたかった」
「ぽち先生、さみしかった」
子どもらは、俊春にたいしても言葉にだして思いの丈をぶつけている。になっている。
つねに注目されていたい派の副長である。百歩譲って相棒のことは許せても、おなじの俊春のことは許せないのかもしれない。
まぁこれもひとえに、日頃のおこないってやつだな。
ってか、おれも副長のことはいえないし笑えない。
それは兎も角、子どもらに抱きつかれ、俊春もめっちゃうれしそうである。尻尾があれば、相棒以上にぶんぶん振りまくっているにちがいない。
尻尾……?
まさか俊春、「ドラゴ〇ボール」の「孫悟〇」のごとく、尻尾がはえているんじゃないだろうな?
俊春の超人以上の力というのが、じつは異世界転生でレベルアップしたのではなく、「スーパ〇サイヤ人」だったからってカミングアウトされたとしても、めっちゃ納得してしまうであろう。
それは兎も角、やっぱ子どもらの背は伸びまくっている。気の毒すぎるが、俊春はわずかに抜かされている。
いいや、おれはまだ大丈夫だ。
俊春と並んだり向かい合ったりするたび、さりげなく心のなかでかれと背比べをしてしまう。
その都度、おれのほうが『高い』と結論をくだしているのである。
主計は、絶賛『俊春より背が高い』である。
ゆえに、おれはまだ子どもらに抜かされては『いない』はず、である。
しかし、なんにせよそれも時間の問題だ。それこそ、明日の朝には抜かされているかも。
そんな危機感と焦燥とにさいなまれまくっている間に、子どもらは俊春とも再会を堪能したようだ。
ようやくおれの番らしい。
先日の永倉とちがい、こういうシーンはうれしいものである。
やはり、別れより出会いや再会のほうが、よっぽどいい。
俊春を解放し、かれらがこっちを向いた。
満面の笑顔をつくってみる。
ついさっきまでの緊張感が嘘のように、いまのおれは自然体である。
「主計さん、いたの?」
「主計さん、いたんだ」
市村と田村が同時につぶやいた。
「……」
さっき、おれを突き飛ばしたよな?おれという存在に気がついていたよな?
返す言葉をうしなっているおれなど、すでにかれらの眼中にも意識にもなくなっている。
さっさと島田と野村のほうへといってしまった。
「ジーザス・クライス……」
まさしく、こういう気持ちである。
「よお主計っ!」
がっくりと肩を落とすおれのまえに、
再度、副長をこっそりうかがってみた。イケメンが、めっちゃビミョーないたらしい。ってか、思いだしたらしい。市村と田村が同時にはっとした。たがいにが立っている。どちらも古株の隊士で、組長たちがいないいま、隊士たちをまとめる幹部的存在である。
やはり、こういうことは大人にかぎる。
二人は、おれという存在を認めてくれている。
そう思うとうれしくなってしまう。感動しまくってしまう。
「蟻通先生、中島先生……」
感動のあまり、声が震えている。
目尻に涙がたまるのを感じる。あまりにも女々しいので、指先でこっそり拭った。
ありがたいことに、かれらはそれに気がつかなかったようである。
どちらもマジな