Entries from 2024-05-01 to 1 month
元通りとはいかないが,みんな強く生きてきたんだなと感じながら歩いた。 「京の人々には大変な思いをさせてしまったな……。」 桂も町並みを眺めながら呟いた。哀愁の漂う横顔に三津は咄嗟に桂の手を握った。桂は驚きながらも握られた手を見て穏やかに笑った。 …
くすくす笑われて三津は好きで問題児やってるんじゃないと口を尖らせた。 こんな他愛もない会話を二人で食事をとりながらするのはかなり久しい。 そんな二人の時間を邪魔するように奴らは現れた。 「木戸さん風呂!背中流すけぇ俺と!」 「いや俺やろ高杉!」 「…
屋敷に帰った千賀はお茶にしましょうと例の菓子を持って元周達の所へ行った。言うまでもなく入江はその菓子を見て顔を引き攣らせた。 「くくっお前の分は私が食ってやろう。」 元周の言葉に甘えて入江は菓子をすっと献上した。 「あなた,今日は屯所の方にお泊…
「元周様!これには事情が……。」 「高杉は黙っとれ。言い付けを破っておきながらよくもまぁ迎えに来られたもんだ。 別に松子は寂しがっとらんぞ?我が可愛がって満足させてやっとる。」 その言葉に入江は眉間に深いシワを刻んで,蔑むような顔で見下ろしてくる元…
人知れず泣いて,それからは仕事に没頭した。男に馬鹿にされない立派な商人になろうと誓った。 吹っ切れてからはお店が軌道に乗った。また老舗の和菓子屋として客足の絶えない店になった。 「貴方は私の原動力やったの。私の心の中でずっと生きてたわ。そした…
喋り続ける女将を前に三津は本来の目的が見えたような気がした。試食なんてただの口実だ。 「それでね,夫に逃げられてお店が大変な時期に出逢ったのが……入江様なの。」 「え?」 そこで三津はようやく声が出せた。呆然とする三津を妖しげな笑みで見つめながら女…