もださずに、淀みなく口からだす。
「それが、そこのところの詳細はわからないのです。島田先生や中島先生、沢さんたちと江戸に潜伏する、としか。おそらく、助命嘆願の書を集めるんではないでしょうか」
うまくいえただろうか?とともに前軍を率いて会津へ進軍するのである。
秋月は、經痛 この戦が勃発してから幕府七連隊に転入し、その後伝習隊に転じて大隊長になった男である。副長とともに、宇都宮城攻略をおこなうことになる。
「そうか・・・」
副長は、ただ一言答えただけである。
おれからの情報がないので、もうなにも副長を縛るものはない。
やりたいようにやってほしい。だからこそ、なにもいいたくなかった。そのうえで宇都宮にゆくのなら、それはそれでしかたがない。
じつは、この宇都宮城。いったんは攻略するが、敵が奪還戦を挑んでくる。副長は、その戦で脚を負傷してしまう。秋月も負傷する。二人はともに、栃木の今市に護送される。そのすぐあと、残念ながら宇都宮城は放棄され、敵に渡ってしまうのだ。
そして、副長が今市で治療をし、癒えて会津に出発する、局長が斬首されてしまう。
ゆえに、伝えられていること、つまり史実を告げたくなかったわけである。
「陽が暮れてから、移動する。それまで、おまえも体躯をやすめろ」
命じるなり、副長はベッドの上にごろんと横になり、とたんに寝息をたてはじめた。
松本が提供してくれた部屋は、通常なら四人部屋のようだ。本物のベッドである。このまえきたときには、そのおおくが木箱などの上に布団を敷いただけの簡易ベッドであった。
おれも眠くはあったが、相棒の様子をみにいくことにした。
いくらなんでも、俊冬におしつけてばかりでは申し訳ない。すくなくとも、かれのほうが活動量ははるかにおおいし、なんか喰ってるのかっていうくらい、喰っているところをみたことがない。
そこでふと、京でまだしりあってそんなに経っていないときのことを思いだした。
俊春の屋敷に遊びにいったときのことである。たしか、養子の松吉に会いにいったのだったか。が、松吉は沖田に剣術を習うために局長宅にいっていて、留守であった。
そうだ。あのときは、原田と子どもらといっしょで、双子はおねぇに会いにいっていて留守だった。にもかかわらず、俊春の義姉のお美津さんに、ぜんざいをご馳走になったんだった。
そのあと、よそ様の屋敷でまったりしていた。そこに、双子がかえってき、おねぇとともにオール明けだっていいつつ、お美津さんのつくった粥をすすっていたっけ。
懐かしい・・・。
あれはまだ、半年くらいまえか?
ずいぶんとまえのような気がする。
そんなことをかんがえているうちに、庭にでていた。
相棒はくくりつけているわけではないが、木蓮の木の下にいる。その木蓮の木は、花がまだちらほら咲いている。
相棒は、お座りしてこちらを向いている。その脚許には、丼鉢が置かれてある。
俊冬は座った姿勢で樹の幹に背をあずけ、休息しているようだ。
奇妙な話だが、それがめずらしく感じてしまう。
ちかづくと、相棒がすっくと立ちあがった。
右掌をあげ、座るよう合図を送る。
「主計、まっていたのだ」
俊冬は、背中だけでなく頭部も幹にあずけて瞼を閉じている。
「あの・・・。さっきはすみませんでした」
さきに謝罪しておく。
かれがいったようなことは、けっして思ってはいない。かれも、それはわかっているだろう。だが、謝罪したかった。
「いや、わたしも詮無きことを申した。おぬしがそう思ってはいないことを、承知しておきながら。まぁたとえそう思われていても、それは真実なので指摘する方がおかしいというのに・・・」
かれのいつもとちがう様子に、なにゆえか心がざわつく。
「あの・・・。大丈夫ですか、たま?なにか、いつもとちがいますよ。まさか、たままでどこか悪いんですか」
いつもだったら、ここで「主計に案じられるとはな」とか、「なにがどうちがうと申す?具体的に申してみよ」とか、「どこか悪い?
わかるかぎりでは、しばらくは江戸市中に潜伏するが、鴻之台、現代では千葉県国府台に集結している、幕府の脱走兵たちと合流する。そこで副長は前軍の参謀として選ばれ、そのまま会津藩士の