をあずかっている。

をあずかっている。義理や人情を貫くことより、一つでもおおくのを護ることを優先せねばならない。

 

 さいわいにも、ここにいる面子はそんな副長の性格をよくわかっている。ゆえに、副長が隊士たちのを選択することもわかっている。

 

 すべてを理解している。

 

 だからこそ、顯赫植髮 だれ一人として疑問や反論、意見をさしはさむことなく、ソッコーで了承したのである。

 

 かんがえてみれば、それってすごいことである。

 

 さすがは土方歳三である。なんやかんやといいつつも、やはりかれこそが「キングオブ副長」なのである。

 

 かれ以外に、それはかんがえられないっていいきれる。

 

 って、副長がにやりと笑ってきた。

 

 もしもーし、副長ーっ!もしかしていまの「にやり」は、おれをよんでのことですか?

 

 副長、だとすればそれは「キングオブナルシスト」、もとい「自意識過剰野郎」ですよ。 

 

 って、今度はめっちゃにらまれた。

 

「土方さん、さきはまだながい。あんたこそ、あまりがんばりすぎすなよ。いまあんたに倒れられたら、新撰組はたちゆかぬからな」

「さようさよう。馬は頭がいいから、自身のことをちゃんと調整できる。が、副長はそうではない」

 

 蟻通がマジなでいった。そのあとの安富の馬との比較は、あいかわらず草すぎる。

 

 副長は安富の馬の話は兎も角、蟻通の忠告に驚いたようである。

 

「かようにみえているのか?おれが、がんばりすぎているようにみえていると?」

 

 ソッコーでイケメンがドヤ顔へと豹変した。

 

 蟻通は、比喩表現的にいっただけにちがいない。暴走、もとい全力疾走をつづけるのではなく、ときにはあるいたり止まったりすることも必要だと。

 

 しかし、副長はそのまんま受け止めたみたいである。

 つまり、倒れるほどがんばっていて、かわいそうとかすごいとか思われていると勘違いしているにちがいない。

 

「悪い、土方さん。いまのは、あんたに申すべきではなかったようだ。申すべき相手を誤ってしまった。ぽち、がんばりすぎているぞ。おまえになにかあれば、土方さんは様々な意味でおわりだ」

 

 つづけられた蟻通の忠告に、おれだけでなく周囲もぷっとふいた。

 

 もちろんふいたのは、副長と忠告された俊春以外である。

 

「勘吾、おまえなぁ」

「だってそうであろう?あんたとぽち、どちらがより動いたりかんがえたりしているのかと問われれば、全員がぽちだってこたえるにきまっている。なぁ、みなもそう思うであろう?」

 

 蟻通は、そういってから一人一人にを向けられた者は、どう返答すべきか困っているようだ。

 

 近藤局長や副長に信頼され、認められている蟻通だからこそ、暴言を吐きまくれるのである。

 

 うーん。どうリアクションすればいい?

 ここはやはり、点数稼ぎに否定すべきか。『そんなことありませんよ。副長は、じつによくがんばっていらっしゃいます。頭だって、働かせまくっていて、これはもうストレスたまりまくりの過労死レベルです。いつ心不全くも膜下出血で倒れてもおかしくないです。ストレスで精神が病んでしまう可能性だって充分あります。そんなけがんばっている副長にたいしてがんばってないだなんて、幹部のお言葉とは到底思えません。副長に謝罪すべきです』

 

 ってな具合に、蟻通を糾弾するのである。

 

 そうすれば、ここのところの副長のおれにたいして抱いているマイナス要素を、綺麗さっぱりぬぐえるだろうか。

 

 でもなぁ……。

 

『どこをどうがんばっているのだ?何年何月何日何時何分に、どのようにどれだけがんばったというのだ?申してみよ』

 

 小学生レベルの問われ方でツッコまれでもすれば、正直、答えられない。

 

 だって、副長ががんばっているところなど、お目にかかったことがないからである。

 

 ということは、もう一つの選択肢か?

 

 笑いに徹する。これである。

 

『ほんまやほんま。がんばるがんばるいうて、いっつも口ばっかりや。動いたりかんがえたりする以前に、縦のものを横にすらせえへんし。いま、ぽちになんかあったら副長だけやのうてはおわりやな」

 

 そんなジョークを披露するのである。

 そんなジョークを……。

 

 い、いや、それはできない。そんな暴言を吐こうものなら、捨て身どころか死地に両脚を突っ込むのも同然である。

 

 だが、笑いの一つくらいはとれるかもしれない。

 

 でもなぁ……。

 

 いまの内容だと、ぶっちゃけ真実をつきすぎていてジョークになっていない。ということは、おなじ笑いでも苦笑いをひきだすだけかもしれない。

 

 だとすれば、の無駄遣いである。

 

 そんなことをのたまったがゆえに、副長は「明日〇ジョー」か「ロ〇キー」、あるいは「マイク・タ〇ソン」や「マニー・パ〇キャオ」なみに、ストレートからのジャブ、ついでにアッパーカットを、躊躇なくおれに喰らわせるにちがいない。

 

 おれは、確実にノックアウトからの『ちーん』してしまう。

 

「蟻通先生、お気遣い痛み入ります」

 

 おれの杞憂であった。

 なぜなら、蟻通とが合うまでに、謙遜の塊である俊春が、控えめにそうきりだしたである。

 

「なれど、わたしは体力という点では犬以上に頑強です。そして、ここに関しては犬以下です。主計の表現するところの『脳筋馬鹿』というわけです」

 

 俊春は、右の人差し指で自分のこめかみをコツコツしながらみじかく笑う。

 かれは、かっこかわいい