のことごとく

のことごとく、双子には無効なのだが。

 

「ちょっとまて、たま。おれは、剣術の指南をっていってるんだ。なんで火事の話になってる?それに、おれがまるで火附けみてぇじゃねぇか?」

「えっ、ちがうんですか?」

 

 ネタかと思って、經血過多 經常痛 反射的に突っ込んでしまった。ソッコー、副長に脚を踏みつけられる。

 

 ふふっ。軍靴だから痛くないもん・・・。

 

「って、いってー」

 

 脚は囮である。後頭部を思いっきりはたかれてしまった。

 

「副長っ!きたないではないですか」

「馬鹿いってんじゃねぇ。いつもいってるだろうが?勝負は勝つか負けるか。その経緯はどうだっていいんだよ・・・。それに、さっきの燃えちまうってのは、おれがを、よむことができたのである。

 おれって、すごーい!

 

 思わず、「コOペンちゃん」のごとく、自分自身をたたえておく。

 

 そして俊春は、副長の心中をよんだり、口の形をよんだりってことすらせず、それどころか意識を地球の真裏にまで飛ばしているのか、ぼーっと空を見上げている。

 

 相棒もまた、口吻を半開きにして「うげっ」ってなってる。

 

「くそったれ。たとえお情けの目録でも、一応はができるんだぞ。そりゃぁ、まともな技は、なに一つねぇかもしれんが。それでも、たまにはやってみてぇって思うときもあるんだよ」

 

 なんてこと・・・。自分で認めてる。いろんな意味ですごい。

 

 さすがは、土方歳三。これも、超絶イケメンという理由だけで、ゆるされるのだからお得であろう。

 

「ぽち。勝負に指名してやる。案ずるな。燃やし尽くしたり、油やら胡椒まみれにしたりってのは勘弁してやるからよ」

「って、あたりまえやないかいっ!」

 

 上司に対し、ツッコミをいれてしまうおれ。もはや、条件反射になってしまっている。

 

「す、すみません。つい、ツッコんでしまいました」

 

 後頭部をはられるまえに、謝罪しておく。

 

 やさしい俊春は、副長の手話まじりの、なかば強制的な勝負を挑まれても拒否らない。

 

「おいおい。おれ様を相手に、無掌でこようってのか?」

 

 おれ様系が、またとんでもない勘違いをぶちかましてくる。

 

「これは、失礼いたしました。なれど、たまとじゃれあうだけのつもりでいましたゆえ、得物をなにももちあわせておりませぬ」

「どうでもいいことですけど、ぽちたまは、マジで得物に無頓着なのですね。散歩係のおれですら、いまでは左腰に「」がなければ落ち着かないというのに・・・」

 

 いつだったか、双子におなじことを尋ねたのは、永倉であったろうか。

 

「や剣士ならば、そうであろう。なれど、われらはそのどちらでもない。ゆえに、頓着せぬ。得物じたい、めったとつかわぬ。を殺るのに得物をつかわば、無念がのりうつってしまうのでな」

 

 俊冬のいいたいことは、なんとなくだがわかるような気がする。

 

「ゆえに、永倉先生の「手柄山」や斎藤先生の「鬼神丸」からは、そういった負の力を強く感じられる」

「え?それって、持ち主にも悪い影響を与えるんですか?」

 

 それこそ、風水とかバッドアイテムみたいな感じで?

 

「遣い手がそれらに負けぬゆえ、問題はない。それどころか、それすら糧とされていらっしゃる」

 

 永倉も斎藤も、やっぱりなんかすごいんだ。

 

「だとすりゃぁ、「」も、とんでもなく負の気ってのをまとってるんだろうな」

 

 副長は、怖ろし気に左腰の得物へと、病床の沖田が俊春と剣術試合をおこなった。その際、会津候は二振りの「和泉兼定」をサプライズで準備してくれたのである。

 

 それらは、双子に下賜された。が、俊冬は「関の孫六」を、俊春は「村正」を、それぞれ所持している。ゆえに、俊冬は「兼定」を副長に譲り、俊春は養子の松吉に譲ったのである。副長が所持していた「兼定」は、俊春のもう一人の養子である竹吉に譲られた。

を「兼定」へと向ける。

 

「副長。ご心配にはおよびませぬ。お忘れでしょうか?副長の腰のものは、二代目「兼定」でございます」

「おっと。そうだったな」 

 

 副長のいまの「兼定」は、二代目である。

 

 まだ、病床の沖田が俊春と剣術試合をおこなった。その際、会津候は二振りの「和泉兼定」をサプライズで準備してくれたのである。

 

 それらは、双子に下賜された。が、俊冬は「関の孫六」を、俊春は「村正」を、それぞれ所持している。ゆえに、俊冬は「兼定」を副長に譲り、俊春は養子の松吉に譲ったのである。副長が所持していた「兼定」は、俊春のもう一人の養子である竹吉に譲られた。