とか頭のことか?」とか、嫌味ったらしく返してくるはず。
それ以前に、こういうことをかんがえてるってことをよんで、ツッコんでくるはず。
が、かれは、ただ静かにほほ笑んだだけである。經痛 イケメンに浮かぶその微笑は、さみしげではかなさ感が満載である。
二羽の雀が、パタパタと飛んできた。一羽はかれの右の肩に、もう一羽は反対の肩に、それぞれうまく着地してチュンチュン鳴いている。
おれがみつめるなか、かれはズボンのうしろポケットからちいさな巾着をとりだした。
新撰組の黒歴史の一つである、浅葱色のダンダラ羽織。現代では、それは新撰組の象徴として有名である。が、現実はちがう。なにせ目立ちすぎる。「池田屋」で有名になってから、この羽織をきて巡察でもしようものなら、不貞浪士のいいになってしまった。さらには、隠密行動などもってのほか。さらにさらには、デザインがイタイ。そのため、しだいに着用する者がいなくなり、暗黙の了解のうちに故意に忘れられた。
俊冬がとりだしたのは、その羽織の布地をリサイクルした巾着である。山崎もおなじようにもっていた。自分メイドの手縫いである。それよりかなりちいさいところをみると、京の屯所にまだ羽織が残っていて、俊冬が自分用に縫い直したのかもしれない。
かれは巾着からなにやらとりだし、それを右の掌上にのせる。すると、雀たちが掌上に移動し、それをついばみはじめる。
?焼き米?掌上にあるのは、そのどちらかにちがいない。
かれは、異世界転生で足軽か流浪の旅人でもやっていたにちがいない。
いまのおだやかなかれは、ついさきほどあの勝をびびらせまくった男とおなじようにはみえない。
いったい、どちらが本物なんだろう。いま、雀に餌をやっているおだやかなかれと、静かだが怖ろしいまでの激しさをみせるかれと・・・。
ふと、「眠り龍」と「狂い犬」の二つ名が、脳裏をよぎる。前者はかれの、後者は俊春のものである。
をさきにゆかせるため、一人で敵の部隊を殲滅した。その力はすさまじかった。
だが、かれののダメージは、はかりしれないものであった。
俊春に「狂い犬」などという二つ名は似合わないし、あてはまらない。それこそ、俊春には「ぽち」がお似合いだ。
もちろん、それはいい意味で、である。
「眠り龍」にいたっては、そもそも本来の力がわからない。まったくもってその二つ名どおりである。ときおりみせる冷酷で獰猛な挙措。それだけでも怖ろしすぎるのに、誠の力のほとんどがまだ眠っているのなら、それがいざ発揮されでもすれば小便でも大便でも無制限にちびりまくるほどびびってしまうかもしれない。
ってか、そもそも、二人はいったいなに者なんだ?
この疑問は、おれだけではない。永倉、原田、斎藤の疑問でもある。
甲州の負け戦から逃げかえっている途中、高尾山を登りながら、永倉が尋ねてきた。
「なにものだ?」
その疑問・・・。
にこれほどまでに肩入れするのか・・・・・・。
謎すぎる。そう、あまりにも謎すぎる・・・。
「主計・・・。主計っ!」
するどく呼ばれ、はっとする。俊冬が、近間にはいるギリのところに立っている。もう雀たちはいない。そのかわり、メジロだろうかシジュウカラだろうか。判別不能な野鳥が、木蓮の枝上にいて、こちらをじっとみている。
もちろん、相棒もじっとみつめている。
「すみません。ぼーとしていました」
「おぬし、よくも飽かずにわたしや弟のことについて妄想できるものだな」
「はい?」
「もれすぎておる。こちらが、いたたまれなくなるくらいにな」
「ちょっ・・・。元気なんじゃないですか?だから、よまないでっていってるでしょう?」
「よむまでもない。もれまくっておると申しておろう。・・・」
かれが、不意に口をつぐんだ。
「まさかぽちがいないから、さみしすぎて元気がないってこと、ありませんよね?」
ちょっとしたジョークをぶつけてみる。
「主計にしては、冴えているな。われらは、一心同体。距離が離れてしまうと力がでなくなるのだ」
「マ、マジで?」
効果音的には、「バババーン!」だろうか。衝撃的すぎる。
なんか、「ア○パンマン」みたいなことをいってるし。
『顔がぬれ○力がでない』
これとおんなじだ。
「じゃぁ、ジャムお○さんにあたらしいぽちをつくってもらって、バタ○さんに投げてもらってはどうですか?」
って、いいかけてやめた。
そんな提案をしようものなら、俊冬なら実現してしまいそうで怖すぎる。
「でも、ぽちと離れ離れになることもありますよね?そういうとき、どうするんですか。なにかの依頼でってことになったら、「力がでません」では通用しませんよね」
そういえば、まだ双子の正体をまったくしらなかったとき、俊冬もいっしょに大坂までいったことがある。泊りではなかったが、二日ほど離れ離れになったはず。
「ひたすら想うのだ」
「はい?」
「どれだけはなれていようとも、われらはここのなかでつながっている」
俊冬は、指が四本しかないほうの掌を自分の胸にあてる。
「たがいに想い、想像するのだ。さすれば、ほんのわずかでも力がでるというもの」
「い、いや、たま。こんなこというのはたいへん失礼かとは思いますが、いくら双子でも、それはどうでしょうか?」
「どういう意味だ?「それはどうか」というのは、どういう意味で申しておる」
「ぶっちゃけ、キモイっていうことです。お年頃の女の子の双子なら、もしくは、ちっちゃな双子の男の子たちならかわいいって思いますが、いい年ぶっこいた
かわいくないことを口ばしっているわりには、
もちろん、かれらをうたがってとこのことではない。なにもかも、あまりにもかけ離れすぎている。そんなかれらが、なにゆえ
俊春にかんしては、ちっともそんなふうにはみえないし、思えない。
京から大坂へ逃げる際、かれは兄の命令で