かに権力を築い

かに権力を築いているあの薩摩が手を組んでいる。つまり、思ったよりも幕府は終焉に近付いていた。

 ただでさえ二回目の長州征討に失敗し、名声は地に落ちたというのに──否、無理矢理にでも長州を潰そうとした辺りから権威も信頼も失っていたのだろう。

 

 

 あろうことか、この新撰組をそんな幕府の臣下──つまり幕臣に取り立てるという噂が真実味を帯びていると近藤は言った。

 

幕臣ねェ……。子宮內膜增生飲食 沈むと分かりきっている泥舟に乗ろうとする奴らの気が知れねェな」

 

「所詮は農民の出と言ったところですか。結局は志よりも権力なのでしょう」

 

 三木と篠原は口々に近藤を非難する。それを聞いている伊東は止めもせずに、涼しい顔をしていた。

 

 

 実際にそれを聞いた瞬間、伊東自身も"何を言っているのか"と思ったという。

 

 長州と薩摩の秘密裏の同盟については近藤が知らぬのは仕方ないとしても、長州を潰しきれなかった時点で幕府は崩れかかっていると分かるだろう。

 

『まだ決定ではありませんが、もしもご公儀が我らを求めて下さるのであれば、その時こそ恩義をお返しする機なのです。幕府の危機にこそ、今まで磨いてきた我々の剣が光るというもの』

 

 そのように、近藤は穏やかな笑みで言った。傍から見れば、何と忠に厚い男なのだと賞賛を受けるだろう。だが、それは幕府寄りの人間が感じることだ。

 

 伊東のように、勤王家から見るとただの愚直な男の綺麗事であり、それに巻き込まれる方の身にもなれと思ってしまう。という男が長州と薩摩の同盟を仲介したということだ。

 

 幕府を撃退して勢いのあるあの長州と、元々「……兎に角。先見の明が無い愚かな集団にこれ以上属することは出来ません。私はまだやらねばならぬことが多くある。幕府と共に倒れる訳にはいきませんからね」

 

 

 伊東の言葉に、二人は大きく頷いた。篠原は心許なく揺れる蝋の灯りを見詰めながら、口を開く。

 

「何を成すにも、頭数は必要というもの。出来るだけ多くの同志を連れて此処を出たいですね」

 

 伊東の命で、少し前から同志を増やすような活動はしていた。その甲斐もあってか、講義に顔を出す人数は少しずつ増えている。後は伊東の巧みな弁舌に任せておけばいいのだ。きっかけさえあれば、人は何とでも変われる。

 

 特に、今のように時勢が不安定なときこそ、人の心というものは移ろい易く、付け込み易い。

 

 

「ええ。特に腕の立つ者は欲しいところです。幹部からも何人か頂戴しましょうかね」

 

「幹部つったって、殆どが試衛館の連中だろう?そんなモン近藤の一派じゃねえの」

 

 三木の言葉に、伊東は口元に薄い笑みを浮かべながら首を振った。

 

 

「彼らは意外と一枚岩では無いのですよ」

 

「確かに藤堂君は此方に来そうですね。……となると、彼と親交のありそうな者も……」

 

 篠原は顎に手を当てながら、思案顔になる。

 

 

「その通りです。例えば、斎藤君……。あれは実に察しのよく使い勝手の良い男ですよ。谷殿の始末をめかせただけで、勝手に処理して来てくれました」

 

 同じ幹部を手に掛けるなど、下手を打てば切腹物だ。しかしそれをやってのけたということは、余程腕に自信があるのか、あるいは伊東の元へ来たがっているとしか考えられない。

 三木は異を唱えるが、伊東はそれを鋭い視線を向けることで黙らせた。

 

「……その女のような者に、