「あれ、私も桜司郎

「あれ、私も桜司郎さんと同じ意見です。

 

 そのようなことを考えていると、肩に土方の手が乗った。それに驚いた斎藤は目を見開く。

 

「す、すまない。ぼんやりとしていた」 朱古力瘤是什麼

 

「珍しいな。……まあ、こんな春の陽気じゃそうなっちまうのも仕方ねえ」

 

 そう言いながら穏やかに笑う土方の方へ、斎藤は身体を向けた。

 

「……なぁ、副長。俺を呼んだ本当の理由は何だ。花見をする為では無いだろう」

 

 その問い掛けに土方は少し驚いたような表情の後に、深く息を吐く。また二十二という歳の若さで、この察しの良さは恐ろしいと思ったのだ。

 

「当てて良いか?」

 

「分かるのか」

 

 土方の言葉に、斎藤は僅かに口角を上げる。

 

「……伊東さんを見張れ、だろう」

 

 

 二度目の図星に、土方は降参したと言わんばかりに苦笑いをしながら頷いた。

 

「やってくれるか、斎藤」

 

「あんたのの中にも懸命に努力をする人だっている。端からそうだと決め付けるのはどうでしょうね」

 

 桜司郎は、自分を加勢するような発言をしてくれた沖田の顔を見やった。目が合うと、にこりと優しげに微笑まれる。

 

 一方で武田はわなわなと怒りに震えていた。

 

「な、な……ッ。上司が上司なら、部下も部下だ!」

 

 立ち上がろうとしたその時、パン……と誰かが手を叩く。すると部屋に静寂が訪れた。音がした方を見ると、上座にいる伊東が穏やかな表情で合掌していた。

 

 

「そこまでですよ。今宵の目的をお忘れなきよう。……さて、皆揃ったことですから始めましょうか。まずは乾杯を──」

 

 伊東の音頭により場は打って変わって穏やかな雰囲気に包まれる。

 

 藤堂はそわそわとしながら、沖田へ耳打ちをした。

 

「……総司がが出来たの……?平ちゃん気になっちゃうなァ……」

 

「そのような事は……。ふふ、どうでしょうね」

 

 何を話しているのかは分からないが、楽しそうにおどけたように笑う沖田を見ていると、胸の奥が暖かくなる。桜司郎はそのような事を思いながら、口に付けた盃を傾けた。 やがて伊東の演説が幕を開いた。安芸で見聞きした長州の断固たる思いから話しは始まり、話しはやがて幕府の悪政へと逸れていく。

 

「正直なところ、には御公儀の考えたるところが分からない。異国の要求におめおめと従い、不平等な条約を締結し、開かれた港はそのままに。天子様は攘夷をお望みだというのに、まるで真逆なことをしている」

 

 

 幕府非難だと捉えられてもおかしくない内容だが、そこは伊東も馬鹿ではない。巧みな弁舌で論点を少しずつ変えては、明らかな批判だと受け取れないようにしていた。

 る輩がいると聞きました。これは非常に心苦しいことです。我々の思想における根本たるものは何でしょう……。藤堂君?」

 

「はい!尊皇攘夷ですッ」

 

 伊東の問い掛けに対して、藤堂は背筋を伸ばして即答する。それを満足気に、凛々しい目元を細めて伊東は見詰めた。

 

「そう!尊皇攘夷です。局長殿も尊皇攘夷の御心があると仰られていた。今は亡き総長の山南君も言わずもがな。つまり、新撰組尊皇攘夷のとして動かねばならない……。そう思いませんか」

 

 その言葉に、大勢の隊士が深く頷く。共感を示していなかったのは、政に興味のない沖田、感情の読みにくい斎藤、そして桜司郎だけだった。

 

 

 それを目敏く見付けた伊東の実弟、三木は眉を顰める。