「離れたくないんだ……。皆とずっと一緒に居たい……」
あの土方のことだ、離れればもう二度と戻ることは許さないだろう。そして一生、目を合わせてくれないだろう。
これは罰なのだ。月經量多 子宮肌腺症 一瞬でも、近藤や土方ではなく伊東の手を取ってしまったから。自分如きが、まるで反りの合わぬ人たちを結び付けられるのではないかと思い上がってしまったから。
「俺は、山南さんのように潔く死ねるかな。隊のために、散れるのかな……」
きっと、自分の意志を最期まで貫いた山南のように、美しく武士のように死ぬことは叶わないことは何となく察している。
己が新撰組を去ることで、大好きな兄貴分を何人も悲しませることになる。裏切り者と謗りを受けることになる。
この時点で美しい死を賜ることなど出来ないのだ。
藤堂は目元をゴシゴシと乱暴に拭うと、空を見上げる。雲と雲の狭間から、薄らと太陽が姿を現し、風花が煌びやかに照らされていた。
まるでそれは冬の桜のように見える。
花びらは静かに大地を白く染め上げ、やがて燃え尽きたように儚く消えていく。
過ぎた青春の日々をも消し去るように──
脳裏には、江戸で青春を共に過ごした近藤らの笑い声、夢を胸に京へ旅立った日のこと、新撰組の名を賜った時の誇らしさが次々と浮かんでは消えた。
ぽろぽろと熱い涙が頬を伝い、空気がその痕を冷やしていく。 やがて伊東らは三日後に帰隊した。業を煮やした土方が、連れ戻させたのである。
だが、帰ってきた三人へ言い渡されたのは、近藤が事前に書いた文の通りに切腹ではなかった。数日間の謹慎処分である。
前例のない甘い処分ではあったが、不思議と誰からも非難の声は上がらなかった。それが人望のある参謀や組長が相手だからか、それともこのことが何れ己を救うことになるやもしれないからか。それは誰にも分からなかった。
当の伊東はしてやったり顔である。これで、自分の重要性が隊内へ示されたと言わんばかりに上機嫌だった。
そんなある日、臥せている沖田の元へ土方が見舞いにやってくる。他の一番組の隊士は皆稽古へ行っていた。
「土方さ、コホッ……はぁ、」
「起き上がらんでいい。……調子はどうだ」
土方の顔を見るなり、身体を起こそうとする沖田を片手で制すると、その横へ座る。
沖田は相変わらず高熱が続いているようで、吐く息は熱く、気だるそうにしていた。
「……良く、は無いですかね」
「……だろうな」
分かりきった事を聞いた、と土方は苦笑いをする。
この兄貴分がわざわざ自分が一人のところを見計らって訪ねて来るなど、目的は一つしかない。そう思った沖田は視線を土方へ向け、口を開いた。
「斎藤君のことですか?それとも……平助?」
そのように言われれば、土方は軽く目を見開く。この弟分は、普段は能天気に何も考えていないような振る舞いをしているが、こういう時は誰よりも聡いのだ。多くを語らずとも、周りの雰囲気や己の表情で察してくれる。
「……どちらもだが、どちらかと言うと後者だ」
「うーん。平助は伊東さんのことを見捨てられない気がしますねェ……」
「それでは困る」
困るんだよ、と土方は顔を歪めた。
軽口を叩いて笑う弟分を見て、土方は口元を僅かに緩める。病で剣を持つ機会が減ったとしても、沖田には笑っていて欲しかった。笑うことは生きる活力にもなるから。
とにかく頼んだぞ、と言い残すと土方は去った。
それを見た沖田はクスリと笑う。誰よりも仲間のことを思っておきながら、副長という役職を全うす