どのような表情をすれば良いのか分からず、桜司郎は困ったように、照れたようにはにかむ。
「身を呈して局長を御守りしたと聞いた。立派だったな。……お帰り。あんたが戻ってくれて嬉しい」
斎藤は口角を上げると、月經不適問題︰ 3種不正常的月經 労わるように桜司郎の肩に手を置いた。その表情は酷く優しげで、口調も柔らかい。普段の彼とはまるで違うそれに、沖田は目を丸くした。
その後も沖田や桜司郎の姿を見掛けた隊士が次々と寄って来たため、ちょっとした騒ぎになる。それを聞き付けた山野と馬越は駆け足で近付いてきた。
「お、桜司郎ッッ!!!」
「鈴木さん!」
二人は目に涙すら浮かべながら、桜司郎の前に立つ。山野は大股で近付くと、両手を広げて勢いよく桜司郎へ抱き着いた。馬越も戸惑いながらそれに続く。
「よく戻ってきたなぁ、よく生きていたなぁ!」
山野は感極まったように、何度も桜司郎の背を擦り、バシバシと叩いた。
「い──ッ!痛い痛い!怪我!怪我してるんだって!」
別の意味で涙を浮かべながらも、桜司郎は破顔する。三人がじゃれていると、それを囲む人垣が突然はけた。
そこから姿を見せたのは、土方と近藤である。 山野と馬越は桜司郎からそっと離れた。代わりに沖田がその横に立つ。
「沖田総司、並びに鈴木桜司郎。無事に帰営しました」
透き通るような沖田の声が天に吸い込まれるように響いた。肌がピリピリと痺れ、立つ。
近藤は一歩前へ出ると、無言で桜司郎の目をしっかりと見つめた。次に感極まったように頷くと、何かを堪えるように深く息を吐く。そして大きな両手で桜司郎の肩を掴んだ。
「鈴木、君。よくぞ戻ってくれた。君のお陰でこの近藤は今ここに立っていられる。その忠心と勇気には感謝しか無い」
「……身に余るお言葉です。私がもっと注意を巡らせていれば、ああはならなかったかも知れません」
謙虚なその言葉に、近藤は首を横に振る。
「その様なことは無い。君はその場で出来る最大のことをやってくれた。かの百戦錬磨と名高い源義経公であっても、あのように身軽で、宙を舞うような動きは出来まい」
「その様なことは……。鈴木桜司郎、ますます精進して参ります」
大袈裟とも言える賛辞を受けて、桜司郎は面映ゆい心地だった。照れを隠すように俯くと、沖田がそれをニヤニヤとしながら見る。
土方はスッと目を細めると、口角を上げた。平隊士の前で笑うことは滅多に無いためか、はたまた美丈夫が微笑んだためか、どよめきが起こる。
「……よく戻った。安芸での活躍は聞いている。身を盾にしてでも局長を護衛したその功績、誠に大義だった。この後、沖田組長と揃って副長室へ来るように」
そう言うと、土方は近藤と共に 荷を部屋へ降ろした後、沖田と桜司郎は揃って副長室へ向かった。深呼吸をした後に室内へ入ると、近藤と土方が揃って上座に座っている。
「あの、局長。恐れながら申し上げます」
「何だね。そう畏まらずともいい」
「私は後ろ傷を負ってしまい、未だに傷が癒えておりません。故に役職を頂いたところで、良い働きが出来るとは思えないのです」
その言葉に、近藤は眉尻を下げて憐れむような視線を向けた。
「そうだった。他に肩と腹にも傷があるだろう。剣は……握れそうかね」
剣客集団において、剣を握れなくなった者がどのような顛末を辿るのか。近藤や土方の脳裏には、山南の姿が浮かぶ。侍として生きる上での