罪滅ぼしに手伝わせてくれと総司が荷車を引く役を買って出た。
護衛代わりに斎藤も横に付き厳重に連れて行かれる。
「これぐらい大丈夫ですよ。女人可以接受禿頭嗎?出現「頭頂稀疏」等現象,是女士脫髮警號! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: よく寝たからかだいぶマシなんです。歩いてでも診療所まで行けますよ。」
三津は余裕の笑みを浮かべてるつもりだが痛みで歪んでいた。斎藤は三津の左腕があまり動かないのが気になっていた。
「左手はどうだ。掴めるか?」
自分の手を差し出した。三津はえへへと笑って誤魔化した。
「斎藤さんは鋭いなぁ。あんまり力入らんくて。」
「こんなにお三津ちゃんの事見てるのにホンマに旦那さんやないんですね。」
ユキの指摘にそこは触れないで欲しいと思う斎藤。
確かに自分が旦那だったら三津はこんな目に遭わなかったのにと思いながら目を伏せた。
「何故よりによって長州……。」
「すみません厄介な人に好かれて。」
『しまった心の声が……。』
口に出すつもりは無かったが漏れていたらしい。しかし本当に何故なのか。きっかけは何なのか。
『コイツが暑気中りで倒れたのを連れて帰ったのは副長。吉田が店に通いだしたのはその辺りからと言う。ならば吉田は副長の女だと思って近付いていたのか?』
でも甘味屋に足繁く通っていたのは総司であって土方は滅多に出向かない。それに女中になる以前の話。
『やはりどこかが嘘なのか?』
だけども斎藤には三津が嘘をついたなら見破れる自信があった。目が合うと三津は笑みを浮かべる。
『考えれば考える程分からん……。』「すみません肩を貸していただけますか?」
ユキの声に斎藤は思考の渦から引き戻された。
『もう着いたのか……。』
総司と斎藤が両側から肩を貸して三津を診療所の中へ連れて行った。
三津を布団に寝かせたら自分達の役目は終わりだ。
「しっかり傷を癒やして帰るんだぞ。」
「はい,ありがとうございました。沖田さんもありがとう。」
斎藤の隣で何か言いたげにしていた総司だが,
「はい,では私達はこれで。」
笑顔であっさりと立ち上がった。そして先生とユキによろしくお願いしますと頭を下げて診療所を出た。
「……本当は見舞いに来てもいいかと聞きたかったんじゃないのか?」
「やだなぁ斎藤さん。勝手に頭の中を覗かないでくれます?精一杯押し留めたんですから。」
参った参ったと笑っているがいつもの元気はどこにもない。
「まだしばらくはアイツの姿を拝めるさ。まぁ副長が監視に誰を充てるかは分からんが吉田が来るかもしれんとなると我々の誰かが交代だろう。」
間違いなく一回は当たるはず。そう落ち込むなと肩を叩く。
総司はへへっと笑った後に大きな溜息を一つ。
「まだ頭の中が整理出来ないんですよ。でも何を整理しなきゃいけないのか分からなくて。邪心だらけでお恥ずかしい……。」
総司は眉尻を下げて笑った。
それは斎藤も同じだった。
「本当に最初から最後までアイツは謎だらけだ。分かりやすい顔をする癖に掴みどころが無い。」
「今回はみんなが三津さんを信じてくれました。私も信じています。
でもまだまだ胸騒ぎがするんです。」
「副長か?」
総司は小さく頷いた。
「土方さん色男が気掛かりみたいで……。今度はその色男を捕まえる気ですかね。」
「自分より色男か確かめたいのかもな。」
「あぁ!それは納得ですね!土方さん自分大好きですから色男って言葉には敏感ですしね!」
今はこんな他愛も無い話が救いになる。この胸騒ぎが勘違いで済めばいいと願った。
三津が診療所に移った。それはすぐに桂の耳に入った。
『思ったより早かったね。疑いが晴れたのか。それとも何かの作戦かな?土方君しつこいからね。
どっちにしろ今度はもう離さないよ。絶対に。』