そう言われて慌てて乃美の横に

そう言われて慌てて乃美の横に並び膝をついて頭を下げた。

 

 

「三津と申します。」

 

 

宮部は三津の正面へやって来て屈み込むと顎に手を添え顔を上げさせた。

じっくり観察され,三津の目は忙しく泳ぎ回った。

 

 

「こりゃ可愛らしい女子たい。桂さんどこで見つけたと?」

 

 

「私は彼女に助けられたんですよ。あんまり触らないでもらえます?」

 

 

吉田の手なら叩き落としたが宮部の手をそうする訳にもいかずやんわりと手を掴んで外させた。【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

 

「羨ましいのう色男で女子が選びたい放題の奴は。」

 

 

宮部はそう吐き捨てて元の場所に戻って胡座をかいた。

 

 

「三津さんは可愛らしいが肝は座っとるぞ。私は怒鳴られた。三津さん座り。」

 

 

乃美は自分の隣に三津を座らせ,それを見て桂は宮部の隣に腰を下ろした。

 

 

「そげな可愛らしい娘に怒鳴られたと?羨ましか。」

 

 

「そっ……その節は申し訳ございませんでした……。」

 

 

三津はあたふたしながら乃美の方に向き直り頭を下げた。

 

 

「構わん。間違ったことは言っちょらんけぇ。頭上げり。」

 

 

乃美は目を細めて三津の頭を撫でた。

 

 

「ええのぉ。私にも頭を撫でさせてくれ。」

 

 

羨望の眼差しを向けていると隣からは鋭い視線が突き刺さる。

 

 

「宮部さん。」

 

 

「冗談じゃ。」

 

 

『やっぱり変な人やった……。』

 

 

まだお酒も呑んでないのにこれだと呑むとどうなるんだと三津は苦笑した。

 

 

「失礼いたします。」

 

 

艷やかな声と共に静かに障子が開いた。

 

 

「お待たせ致しました。」

 

 

恭しく頭を垂れてしなやかに顔を上げた。

 

 

『うわぁ……幾松さんや……。綺麗……。』

 

 

普段会いに来るお松とは違って芸妓としての幾松に会うのは初めてで三津は釘付けになった。

 

 

顔を上げた幾松はゆっくりと三津の方へ視線を寄こした。

 

 

「お三津ちゃん!元気そうで良かったぁ!」

 

 

妖艶な笑みの幾松はすすすと歩み寄って三津に抱きついた。

 

 

「あの時はご心配おかけしましたし,わざわざ来てくれはってホンマに何てお礼言えばいい……か。」

 

 

抱きついた幾松の白粉の匂いが三津の鼻をくすぐった。

 

 

『この匂い……。』

 

 

嫉妬心を呼び起こす嫌な匂い。次第に三津の笑顔がぎこちなくなる。

 

 

「今日は私の妹達もお相手いたしますんでよろしゅうおたのう申します。」

 

 

そう言うと舞妓が二人入って来て幾松はすかさず桂の隣に座った。『着物,帯,簪……。全部お三津ちゃんに似合うのを見繕ったんやろなぁ。』

 

 

幾松はちらりと横目で乃美にお酌をする三津の全身を隈なく見た。桂の愛を一身に受けてるのが目に見えて憎らしい。

 

 

「可愛らしいお姉さんやわぁ。どなたが連れて来はったん?乃美様のお嬢様?」

 

 

「私の娘に見えるか?もし三津さんが娘なら絶対桂の嫁には出さんな。」

 

 

乃美はふんと鼻を鳴らして酒に口をつけた。お酒が入って顔を赤くした宮部はけらけら笑った。

 

 

「三津さんは桂さんが片時も離したくない女子だとさ。」

 

 

宮部がにやにやと笑いながら桂を一瞥すると舞妓達が目を丸くしてくすくすと笑った。

 

 

「嫌やわぁ幾松姐さんおるのにそんな冗談よしてくださいな。」

 

 

『まぁそうなるよね。』

 

 

不釣り合いなのは分かってる。三津は笑ってやり過ごすしかない。早くも居心地の悪さを感じる。

 

 

「こら二人共止しなさい。」

 

 

舞妓達を叱りながらも幾松は余裕の笑みで桂にしなだれかかってお酌をする。

 

 

『あぁやって白粉の匂いをつけて帰って来るのね。』

 

 

なるほどねと三津は納得しながら乃美へのお酌をし続けた。それしかする事がないんだ。

 

 

「三津さんは呑まんそ?」

 

 

ちょっとぐらいどうだ?と乃美が勧める。乃美に勧められては断れない。

 

 

「あまり呑めませんけどいただいても?」

 

 

「折角やけ呑み。」

 

 

笑顔で注がれては喜んで呑むしかない。

 

 

「いただきますね。」

 

 

ちょっとずつ呑み進めるのを肴に乃美は酒を呑む。

それを羨ましそうに眺める桂の太ももを幾松がつねり上げた。

 

 

「いっ……!」