をちかづけないと

をちかづけないとみえないじゃないか?

 

「みてみよ」

 

 せかされてしまった。

の状態がよくないせいか、子宮環 なにゆえかあらぬかんがえにばかりはしってしまう。

 

 もしかして、これって誘われてる?

 

「はあ・・・・・・」

 

 態度には超ダルそうに、心のなかではドキドキしつつ、腰をうかして膝行する。

 

『ぶちっ!』

 

 そのとき、しずかな室内に音が響いた。

 

「ほうれ、ながいであろう?」

 

 なんと、かれは人差し指と親指で睫毛をむしったのである。

 

 もう片方の掌に、のせられた大量の睫毛・・・・・・。

 

 たしかに、少女漫画級にながい。ってか、つけ睫毛なのか?ってくらいにながすぎる。

 

 脳裏に、少女漫画チックの「島田魁」を思い描く。

 バックに薔薇の花。きらきら感満載で、白いブラウスの胸元をはだけ、スラッとした感じの白いスラックスをはいている。靴は、ローファーだ。。そこに浮かぶ、さわやかな笑み。髪は、金髪でやわらかくカールしていて・・・・・・。

 

「ぶふふふっ」ほどの腕ではないが、おぬしの心の臓を確実に貫くだけの

 

 不覚にもふきだしてしまった。

で忠告してきた。

 

「す、すみません。いやー、マジながいですね」

 

 笑いながら、取り繕う。

 

 ほんのわずか、元気がでた気がする。

 

 島田がおおきなため息をつくと、掌の上の睫毛がふわりと飛び、畳の上に落下してしまった。

 

「それで、質問はなんでしたっけ?」にいたわけじゃないんです。なにゆえ、そう思われるのです?」

「あの二人が、おぬしのことをしっていたようだからだ。ゆえに、たがいにしっていたのかと」

 

 ソッコーかえってきた。

 

 なに?なんだって?双子が、おれのことをしっていた?

 

 

「おぬしは、あの二人のことをしっていたのではないのか、と尋ねたのだ」

「え?いえ、しるわけないじゃないですか。島田先生もご存じのとおり、おれはもともと

「主計、わたしは「小太刀日の本一」の

「もしかして、相棒のことじゃないんですか?ほら、だれだってしっていましたから。もしくは、相棒を連れたおれのことを」

「言の葉にするにはうまくできぬが、おぬしのことを噂にきいたとか、みかけたとかではない」

「いったい、どういう根拠で・・・・・・」

 

 周囲どころか新撰組全体、それどころか新撰組に関係するすべてをよくみききし、心を配っている島田である。

 そのかれの言葉である。あながち思いすごし、とはいいきれないものがある。

 

「俊冬は、副長にそっくりだ」

 

 島田は、おれがいいかけたことをスルーしてつぶやく。

 

「副長がもうすこし歳をとっているか俊冬が若ければ、それこそ隠し子といいたくなる」

を向け、こちらへそれを戻す。

 

「ええ。それは、おれも感じています。おれだけではありません。永倉先生、原田先生、斎藤先生も同様です」

 

 沈黙が、重くのしかかる。

 

「いろいろなことが、不可思議でならぬ。正直なところ、主計、おぬしよりもよほど不可思議だ」

「はい?」

「おぬしがずっと

 島田は、燭台にの時代からやってきたということを、疑っているわけではない。が、あまりにもこの時代にそまりすぎているがゆえに、違和感がないのだ」

「ええ。自分でも驚いています。おれ自身、元いた時代よりもこっちのほうが、よほど性にあっていると断言できますので。まぁもともと副長が好きで・・・。いえ、そういう意味の好きではありません。あくまでも、土方歳三という男の生きざまが・・・・・・」

「わかっている。おおいにわかっているから、つづけてくれ」

 

 いや、島田。ぜったいにわかってないし、すりこまれすぎていてわかろうという気もしないだろう?

 

「この時代のことをいろいろ調べました。ムダに知識があるわけです」

 

 そういいつつ、人差し指で自分の右のこめかみのあたりをポンポンとたたく。

 

「ゆえにこっちにきて、むしろなんか懐かしいって気がして・・・・・・。で、おれは違和感がないのに、かれらにはあるっていうんですか?」

「あるのかないのか、どちらかを選べばといわれれば、ない、だ。が、なにかがひっかかる。これもまた、なにがと問われれば、答えようもないのだが」

「なんとなく、わかるような気がします。島田先生。かれらの違和感のことは、この際あとまわしにしましょう。じつは医学所で夜になるのをまっていたとき、俊冬殿と話をしたんです。そのときも、かれはめっちゃ様子がおかしくって・・・・・・」

 

 自分から尋ねておいて、話題をかえるイヤなやつである。

 が、どうしても話しておきたいのである。

 

 いまの副長に、医学所での俊冬との会話の内容は伝えられない。よりいっそうショックを受けるだろうから。

 だとすれば、島田にしか話せない。

 ゆえに、そのときのことを思いだしつつ伝える。

 

「俊冬殿は、『副長や主計を落胆させることになる。絶望させることになる』といわれました。『副長と主計は、わたしを恨み、軽蔑することになるだろう』とも。とてもではないですが、こんなことをさきほど副長に伝える気にはなれませんでした。おそらくですが、これがきっと、暇乞いの理由につながるんですよ」

「いったい、なにがあるというのだ・・・・・・」

 

 それから、島田と二人であれこれ推測してみたものの、ベタなものばかりで、結局これという案がでないまま、そろって寝落ちしてしまっていた。