四人が互いに視線をかわす

 四人が互いに視線をかわす。これは大変な話だ、襲われてから聞かされたのではなく事前に察知できたのは大きい。

 

「橋太守、放ってはおけませんでしょう。軍を率いて濮陽へ戻られるのが宜しいのでは?」

 

 大義はあるが、安全期 太守として領民の危険が迫っているならばそれを守るのが優先される。流石に曹操も戻るのはやめろとは言えない。ここで軍が離脱したらどうなるだろうか、恐らくは会盟がなされずに連合は消滅してしまう。

 

 董卓を打倒することが出来なければ、この場の面々は良くて処刑、悪ければ三族討滅されてしまうだろう。ましてや偽の檄文を書いてしまったのだ、真っ先に処罰されるのは目に見えている。

 

「いえ、大義を目の前にして翻弄されるわけには参りません。この場に残り目的を達しましょうぞ」

 

 曹操はそれを聞くと駆け寄りその手を取り大喜びする。

 

「さすが元偉殿です! 素晴らしいお気持ちで!」

 

 率直な感想であって持ち上げたわけでも何でもない。実際どちらが正解かなどこの場で誰にもわからないのだ。

 

「さりとて放置も出来ませんので、郡尉を任じ賊に備えさせようと存じます。少々席を外しても?」

 

 郡尉とは大きな領土で軍を分けて運用する時に任じられたりする職だ。今回のように太守が不在時には長吏が取り仕切ることが殆どだが、軍事に疎い者がその任にあるならば、このように専門家に権限を委譲することがあった。

 

「ああ、もちろん構いませんとも。なあ皆」 はつらつとした表情になった曹操、親友の二人はある種ほっとして大きく頷いてやる。太守としての仕事は重々承知している、なにせ同じ立場なのだから。

 

「無論です、どうぞ役目を全うされますよう」

 

「賊の情報が入れば東郡殿にお届けします。こちらは気になされずに」

 

 橋瑁は礼をして幕を出て行った。盗賊の殲滅位しっかりとしておけ、敵である董卓に対してそんな思いを持ったところでどうにもならないので口にはしない。

 

「しかし孟徳、どちらにせよこの積雪ではおいそれと動けんが、雪解け前に懐まで進軍してはおきたいな」

 

 黄河の北岸の郡都に入ることが出来れば、どこかで渡河戦をすることで洛陽に迫ることが出来る。王匡の役目は連合軍が集うまで河内を守り切ることだ。

 

「それだが鮑信、敵前で渡河するのはかなり厳しい、南岸を進む手もあると思うのだ」

 

 何せ河は言うがキロ単位の幅を持つ世界の黄河が相手だ、居場所を知らねば海と言われても信じてしまうだろう。そんなところを敵に邪魔されながら渡るのは容易なことではない。

 

「南岸をだって? そちらには汜水の虎牢関がある、あそこは難所だぞ。孟卓の意見は?」

 

「俺は二人と違い軍事に明るくはないのだぞ。関所があるのはそこを通行されると困るからだと考えれば、一つの選択肢ではあるのだろうな」

 

 張邈の言葉に二人が頷く。問題はどうやって名だたる堅城の虎牢関を抜くかだ。洛陽を守るために東西南北に八カ所の関が設置されていて洛陽八関と呼ばれている。どれもこれもが堅固で、権力者の保身に対する熱意が伺えた。 はつらつとした表情になった曹操、親友の二人はある種ほっとして大きく頷いてやる。太守としての仕事は重々承知している、なにせ同じ立場なのだから。

 

無論です、どうぞ役目を全うされますよう」

 

「賊の情報が入れば東郡殿にお届けします。こちらは気になされずに」

 

 橋瑁は礼をして幕を出て行った。盗賊の殲滅位しっかりとしておけ、敵である董卓に対してそんな思いを持ったところでどうにもならないので口にはしない。