これではどちらが賊

 これではどちらが賊か解らんくなるな。せめて略奪だけは禁止しよう、食糧は税の前払いってことで勘弁だ。しかしこれはかなり不安定だぞ。

 

泉州と方城の中間で、やや南に文安県が御座います。そこが北方区域の後方基地、武器庫になっておりますので、そこから徴発することで多少は改善するはずです」

 

 さすが荀?だ、そういったスペシャルがあるならば悪くないぞ! これを知らなかったら、素手とボロ着で吶喊することになるわけか、たまらんね。

 

「よし、ではそいつを採用しよう。避孕方法 公孫賛への具申はいつが良い?」

 

「三日で偵察情報が更新されるので、その夜に」

 

 歩きでそれは無い、偵察用の騎兵をどこかで調達していたのか、或いはこうなる前に忍ばせていた? いずれにしてもこれから用意するような眠たいことは言わないわけだ。 ほんと居ると居ないとでは段違いの選択肢だな。こういった人材を活かせない公孫賛に未来はないぞ。

 

棗太守

 

 具申して与えられた兵士は二千人、たったの二千人だぞ? 反旗を翻した張純だって一万は兵士を持っているだろうし、それに同調するだろう同族の奴だって数千はいる、そして異民族の烏桓は一万くらいなのか? いずれにしてもこれで戦えと言うのはあまりに少ない。

 

 見た目の割に存外渋いやつだったんだな公孫賛は。食糧事情のほか、血統なのか、あいつは体つきが良いんだ。大柄なわけじゃないが、骨が太いと言うか体力はありそうにみえる。肉を喰い続けたらどうなるんだろうか。

 

 それはそうとして、話にあった武器を回収しに行こうと思っている。文安城はあと一日の距離ってあたりらしい。

 

 こちらの数は元から連れていたのと合わせて二千五百になったものの、烏合の衆と言う域を全く出ない。これ戦いになったら即座に敗北だな、やる前から勝てる要因がまったくこちらにないのが分かる。

 

「我が君、このまま突然近づいても警戒されてしまうでしょう」

 

「そうだな、ではどうする」

 

「公孫賛の命令だとして、倉を開くように伝令を出しておきましょう」

 

「言った言わないの水掛け論になるんじゃないのか」

 

 何せ誰しも手元のあるものを他者に渡すのは惜しいと思うからだ。それが国家の資産であっても、なぜか渋るんだよ。

 

「命令書を作成するのです。実は文若の手元に適切な印綬がございますので。どうせ交わることがないならば、せいぜい名前を使われてくれる位の事はしていただきませんと」 さらりと手厳しい感想を織り交ぜて来た。命令書の偽造は重罪だぞ、わざわざそれを訴えたとしても証拠はきっとどこかに失われているんだろうがな。

 

「ハハハそれは良い、すべての責任を俺が取る。その線で行こう」

 

 つまるところ公孫賛が発したかのような偽の命令書を作って、それを先行させた。部隊には預かっているものもあった、何よりもこの部隊の大半は公孫賛からなので間違いではないぞ。

 

 到着したところ、多少いぶかしく思ったらしいが、実際の軍勢を見たのでそんなものかと装備を分けてくれた。とは言っても、矛と若干の胴鎧だけ。ないよりはるかにマシではあるがね。

 

 張遼が馬を寄せてきて「それで島殿、本当に泉州まで行くつもりか」などと言葉を投げかけてくる。

 

張遼もそう思うだろ、さすがに何もせずにどこかに消えるわけにもいかんが、ことさら真面目に包囲のど真ん中に行く必要は全くない」

 

 だからと海沿いに行って俺たちの有利は何一つない、南に行くわけにもいかないし実際どうしたものかと思うよ。

 

「それでしたらここの太守を頼ってはいかがでしょうか」

 

「ふむ、この辺は何と言う事だったかな」

 

 正直なところ頭の中に全く入ってないんだよ。

 

「河間郡でございますれば、太守は棗範殿です」

 

 ふむ……誰だって? 知らんな。知っているのがわずかと言うわけではあるのだが、まぁ荀?が言うのだから何とかなるんだろう。棗姓など初めて耳にした。

 

「わかったではそうしよう、手配は任せても良いか」

 

「御意」

 

「うむではそうする。お前たちは部隊を四つに分けて、それぞれ訓練を行うんだ、まとまって歩くぐらいは絶対にさせろ」