この場の誰にではなく

 この場の誰にではなく皆に尋ねる、誰かが聞いていれば教えるようにということだが。残念ながら進み出る者はいなかった。いや、この際待つのは愚策だろう、こちらから真っ正面仕掛けるべきだ。俺がそうするだろうことくらい孔明先生も承知だろう。

 

「では柴桑へ出向いて様子を探って来る役目を引き受ける者はいないか」

 

 ざっくりとした目的しか述べていないのに志願者は現れた、このなかで一番の年配者である董遇。

 

「それでしたら私が行きましょう。businessster.com/7-popular-options-trade-strategies/ 万が一戻らずとも困りはしないのが利点の一つ」

 

 軽く笑いながら己を卑下したが誰一人笑いに同調する者はいなかった。董軍師であれば門前払いを受けることは無い、魏に所属していたこともあるので知己も居るだろう。

 

「俺が困る、必ず帰って来てもらう。訪問の名目は」

 

「柴桑であれば大都督陸遜に男子が産まれたとか。その祝いとでもしておきましょう」

 

 ほう、そんなことを知っているとはな、どこで誰が産まれたなど気にもしたことが無かった。祝いの客ということならば無下にも出来まい。

 

「では宝物を持って向かうんだ。護衛には胡周を連れて行け」

 

「御意、胡将軍をお借りいたします」

 

 道中密かに何らかの接触をしてくる奴もいるかも知れない、変化球がそこまで得意ではない董軍師ではあるが、メインは偵察の類だ問題あるまい。今日のところは休むとするか、退室を宣言すると己の部屋へと向かう。

 

 寝室には銚華が居て姿を見ると「お帰りなさいませ旦那様」声をかけて来る。

「ああ、今はここが我が家というわけだ」

 

「痛みが激しくご不満ではありましょうけれど」

 

 言うように決して立派な部屋ではない、寝泊まりするだけなら充分ではあるが。幾ばくかの調度品を置いて誤魔化しているだけ、奪ったばかりの地方の城、その一室などそんなものだ。

 

「なに、可愛い妻が居るだけで大満足だよ」

 

 長らく留守にしてはいつも死にそうになっている夫で悪いとは思っているんだ。軽口を叩くと銚華はにっこりと微笑んで寄り添う。心の安らぐ場所を作ってくれてありがたいことだ。

 

「道中耳にいたしましたが、南匈奴が幽州へ入ったとか」

 

 異民族だな、鮮卑と地域が大分被っているはずだ、鮮卑の居残りの方に攻め込まなくて良かったよ。これも孔明先生の誘導なんだろうか?

 

北軍はその対応に出動しなければならないわけだ、正直助かるよ」

 

 ある程度以上はいくら兵が居ても戦場に居なければ意味がないが、それでも不安定要素が減るのは嬉しいこと。公孫の反目もあって、殆ど北部は余裕がないだろう。それでも十万が減っただけで三十万からの兵が使える。だがその割に行方不明の兵が十万か、地方の守備についているなら良いが、どうなんだ?

 

羌族は別としまして、涼州や西域、三輔の敵性住民が大人しくしているのは時間の問題かと」

 

 まあな、手薄な今こそ独立を狙うだろうし、何かを画策するには好機。そいつは解っている、だがどうにもならん。

 

「どのくらいの期間だと見てる」「……半年を出ずに動くでしょう」

 

「そうか」

 

 半年、長いようで短い。次の冬で長駆出来なくなるときが期限というわけか。首都で籠城されたら厳しいものがあるぞ、落とす時には力だけでは無理だろうな。司馬懿はどうするだろう、長期戦に持ち込もうと主張するな、だが曹真は反対を唱えるはずだ。

 

 彼我の力関係は互角、だが世には血筋というものがある。曹真の意見が半歩先を行くのが常。俺が短期戦を狙えば司馬懿は長期戦を主張、それで曹真が短期戦を擁護する、その時どうすれば皇帝は短期戦を支持するかだ。