全てが終わった後で破産するくらい喜んで受け入れてやるさ。十年あれば払い切ることは出来るはずだ。
「敵地の民から購入する……むむむ」
珍しく低く唸る呂軍師に軽く目をやり、皆を見渡す。冗談で言っているわけでも、誇張しているわけでもないぞ。
「特例として、technomaniaa.com/basic-concepts-of-the-stock-market/ 蜀が戦争に敗北しても中県に受け取りにやって来くれば支払うぞ」
いたずらっぽく笑いながら無駄にはならない配慮を示してやる。取りに来てそのまま住み着いても良いんだ、好きに選択すればいい。
「魏軍にただで持っていかれる位なら、蜀に売ろうって考えるかも知れないな。副次的な部分で、これに応じれば命は助かるという安心感を与える効果がある」
鄭参軍が末端の民の立場でそう感じるだろうことを想定する。なるほど略奪するつもりじゃないならばそういう思考に発展するだろうな、蜀に恨みはなく避難してくれれば助かる。
「すると略奪するときは魏軍の軍装でしなきゃな。交渉を断られたからって放置してたら作戦にならない」
石苞のいうことはもっともだ、蜀だとバレようとも魏軍を装うのが大切だ。証拠能力などどこにもないんだ、噂が千里をかけるだけ。地元の跳ね返りを雇って、最前線で動かせば他国の人物ってのも判別できんくなる。そのあたりの偽装はいつものことだ。
「軍事方針を確認します。各郷で糧食買い上げの交渉、決裂時には略奪を視野に。魏軍を分散させるのを目標とし、数が接近した時に決戦を挑む。大まかな筋はこれでよろしいでしょうか?」
「ああ、そいつでいこう」
決戦期間をどこまで縮めることができるか、それが肝ってことだ。そもそも互いの食糧など二十日分も備えて居ないんだ、そのつもりならば夏が終わる前に勝ち負けなど決まっている。
詳細な役割指名は呂軍師に一任してしまい軍議を終えた。
◇
武将らを各地に派遣して工作を始めた、兵力の減りはあるが以前よりははるかにマシ。半面で兵糧の減り方が激しいので考えどころではあった。寓州城も維持できているようだが、そのままというわけにはいかない。
「李信、こちらへ」
「はっ!」 思い付いた時に側に居た奴の名を呼んだ、陸司馬と軍師、参軍ら、それと必ず一人は李兄弟の誰かが侍っていた。別に自分の幕に居れば良いのだが、こいつらと来たら時間があればここで警備をすると言ってきかん。
「特命を与える。船を用意して寓州の重傷者を後送する役目だ、兵二千を預ける」
「拝命致します!」
知っての通り臥せっている者の多くは同郷の兵士、こいつにとっても望むところだろう。問題は幾つもある、だがその全てを解決出来るだけの経験を積んできているはずだ。
「何か聞いておくことは」
「長安方面ではなく、永安方面へと運んでもよろしいでしょうか?」
「ふむ……河を下る方が良ければそれでも構わん。文聘が邪魔立てをする可能性が高いが」
荊州の水軍が必ず阻害して来るだろう。だが北部へ向かうのとどちらが危険かは何とも言えん、こいつなりの考えがあるんだろう。その後、中県に近いのは南というのは間違いないがな。
「丞相の策が功を奏して呉が遊軍となれば、文聘も我等に構っている暇はないでしょう。それに、河西にある城へ避難することも出来ます。寓州より後送するだけならば敵が少ない南部に」
「そうか、お前に任せる。黙ってここで座っているだけでは仕方ない、だが本営があまり戦をするのもいかんと痛感した」
ではどうするってことだが、後詰で観戦だけしていればいいんだよな。ところがどっこい、前に出ると黙っていられない、難儀な性格だな。呉の態度がいつ変わるか、これが重要だ。
「呉方面の偵察からの報告はないか」