女のくせにはしたない

女のくせにはしたない…一発………!?一つの結論に達した紫音は、一瞬顔を真っ赤にした。「お?」その真っ赤になった顔に、気付いたのは原田だけだ。紫音はすぐに冷静さを取り戻し、いつもの笑みを浮かべる。そして間近に迫る原田の首に、クナイを添えた。「私は今近藤さんと話しているので、少し黙っていてくれませんか?」でないと刺しますよ?いつ出した!?原田は驚きのあまり Nuhart UMOT み込んだ。黙った原田に極上の笑顔を見せて、紫音は近藤に向き直る。「勘違いされてるようですが、そういう意味じゃありません。貴方がどういう考えの持ち主か、それを見極めたいだけです。断っておきますが、私は敵ではありません。もちろん味方でもありませんが…情報を流したりはしません。ただ、知りたいだけなので」話しながらも、これはまずい方向にいくかもな、と思った紫音は、一つつけ加えた。「私は本気です。趣味なんです、人間観察。ですから友人としてお付き合いいただけませんか?」真っ直ぐに近藤を見つめた紫音に、その場にいた全員が近藤の答えを待った。大将、近藤は腕を組んで考えた後、柔らかな笑みを見せる。「…近藤さん?」「わかった。君の満足いく男かどうかわからんが、気の済むまで見るといい。俺は近藤勇、これから友人として仲良くしてくれ」そう言う近藤は、一回りも二回りも大きく見えた。「さすがですね、器が大きい」安心した紫音は、礼を尽くし、頭を深く下げた。「宜しくお願いします」だが、土方だけは腑に落ちない表情をしていた。それに気付かない紫音ではないが、この流れを止められては困るのであえて黙った。「ところで紫音くん、改めて紹介しよう。そこにいるのが副長の土方歳三」「…怪しい動きしやがったら即叩っ斬るからな」「こらこら、トシ。君が仕合った沖田総司」「また仕合しましょうね、紫音さん」「はっはっは、真剣だけはするんじゃないぞ。副長助勤の永倉くん」「永倉新八だ、よろしく、嬢ちゃん」「で「原田左之助!青春真っ盛りの24歳!!紫音っよろしくな」遮られた近藤は苦笑いだ。その裏も何もない、欲望に満ち溢れた原田を少し羨ましいと思った紫音であった。「じゃぁ今日は失礼します」「あ、送りますよ、紫音さん」「そうだな、そうした方がいい」「そう…ですか、じゃぁお願いします」近藤にも促されて、立ち上がった紫音と沖田は連れ立って出ていく。それを残念そうに見送る原田であった…。屯所を出た二人は壬生寺へと向かった。紫音が寺を見たいと言ったからである。家族以外の女子と二人きりになった事が数える程しかない沖田にとって、盛り上げる会話の一つも出て来ず、二人の間には沈黙が流れた。沈黙を破ったのはやはり紫音である。「すいません、面倒ですよね」「えっいや、そんな…僕から言ったんですし」「そういえば、まだお礼を言ってなかったですよね。ありがとうございました」沈黙が破れた事にほっとしながら、紫音の台詞にキョトンと首を傾げる。紫音はくすりと笑って耳元に口を寄せた。「さっきの仕合、負けてくれて」ささやきの何と甘い事か。沖田はまた顔を赤くしたが、紫音は気にも留めずに続けた。「貴方は最初から私に勝つつもりなかったんでしょう?」確かに、最初はそのつもりだった。だが、途中からかなり本気になっていた。あまりにも楽しくて。どう返してくるのか知りたくて。「そりゃ最初はそうでしたけど…僕は本気でっ」