そして、なにげに現代

かよ」

 

 そして、なにげに現代語を使いこなす副長。

 

「兎に角だ。だれかさんのごとく、酒がはいったら毎度、諸肌脱ぎになっては腹の一文字傷のいわれをながながと語るってのは鬱陶しいかぎりだが、おまえら三人のは、だれかさん以上に語っても罰はあたらねぇだ」

 

 だれかさんとは、子宮內膜增生飲食 原田のことである。口論の末の売り言葉に買い言葉的にやった切腹未遂を、ことあるごとに自慢するのである。

 

 原田のことは兎も角、おれの傷も、でなら語ることができるだろう。

 

 みると、俊冬がおおきくうなずき共感を示している。

 

「数えたことはありませぬが、二人合わせれば相当な数でございます。一つ一つを語るには、そうとうなときが必要でございましょう」

 

 それから、生真面目に応じる。

 

「ふんっ。わたしのほうのは、だれかさんにつけられたのがほとんどゆえ・・・」

「あっ、あれは?」

 

 俊春のかすかなつぶやきにかぶせ、俊冬が川の向こうを指さす。反射的に、副長もおれも相棒も、そっちをみてしまう。

 

『ごんっ!』

 

 空から隕石でも降ってきて、超絶不幸なを戻すと、俊春が頭を抱えてしゃがみこんでいる。

 

「大丈夫ですか、ぽち」

 

 ひええええ。あんだけ音がするほど殴られれば、痛みに耐性のある俊春だって痛いはず。それに、頭部じたいによくない。脳震盪とか脳挫傷とか、頭蓋骨陥没とか骨折とか、起こってもおかしくない。

 

「たまっ、なんてことするんです?」

「失礼なことを申すな、主計。わたしはなにもしておらぬ。ぽちはひっくり返ったのだ。のう、ぽち?」

 

 俊冬は、まるで虐待やいじめの加害者のごとくふるまう。

 

「そのくらいにしておけ、たま。ぽちも生真面目にやられてねぇで、幾度かに一度はやりすごせ。あるいは、やり返せ」

 

 くくくっと、喉の奥で笑いながら、副長はやんわり注意する。

 真剣さがたりないというよりかは、『まったく。しょーのない餓鬼どもだ』的なゆるさを感じる。

 

 その副長のなんとも表現のしようのないをみ、俊冬も観念したようだ。弟へ掌を伸ばすと上腕部をつかみ、そのままひきあげて立たせてやる。それから、おそらく殴打したところであろう。そっと掌でおおってやる。

 

「冷たい」

 

 俊春は、気持ちよさげに瞼を閉じている。

 

 そういえば、俊冬は冷たいことを思いだす。いや、性格がってわけではない。『冷え性ここに極まれり』的に、掌でも脚でも、っていうか、体全体冷たいのである。

 

「ここで会ったが百年目ってわけじゃねぇが、一手指南してくれ」

 

 あいかわらずムダに軍服姿の映える副長は、右腰の「兼定」を左掌で軽く叩きながらタカビーにいう。

 

「指南?」

「指南?」

「指南?」

 

 双子とともに、「それは日本語なんですか?」的に叫んでしまう。

 

「ちょっとまちやがれ。指南つったら指南だろうが、ええ?」

「あの、副長。いったい、なんの指南なのでしょう?」

「なんだと、主計?わかっててきくんじゃねぇ。それから、ぽちたま。胡散臭そうにみるんじゃねぇ」

 

 副長がキレた。だが、だれもが胡散臭く思うだろう。

 

 これが局長だったら、肩のことを心配しつつも、逆に指南を乞うだろう。永倉や斎藤もまたしかり。胸をかりただろう。

 

 普段のおこない?ひととなり?キャラクター?心構え?

 

 兎に角、こと剣術や勝負事となると、副長には暗黒面しか感じられない。まさしく、ダークサイドに落ちた者、である。

「おいおい。揃いも揃って怖気づいちまってるってか?」

「いえ、副長。おそれながら、昨日の大雨で地面はぬかるんではいますものの、すぐうしろには葦が密生しております。空気は乾いておりますゆえ、火が燃えうつろうものならあっという間に延焼してしまいます。そうなりますと、火の粉が民家に飛び散り、村の家々まで燃えてしまいまする」

 

 なにせ副長は、勝負事であろうとなかろうと、こと剣術にかけてはきたなすぎるのである。胡椒爆弾を投げつけたり、油を投げつけたり、投げつけたうえで火をつけたり・・・。

 

 シリアスなシーンであっても、副長なら、燃やしまくって平気で高笑いしそうである。

 

 もっとも、残念なことに、そのきったない

 いや。それよりも、