坂本は半ば強引に、桜司郎を外へ連れ出した。灯りはなく、月明かりだけを頼りに無言で歩く。
やがて近くを流れる川にかかる橋の上で立ち止まった。吹き付ける風は冷たいが、屋敷を出る前に坂本によって被らされたと首巻がほんのりと暖かい。
「……ずっと浮かん顔をしちゅう。ワシで良かったら話しを聞くき。ああ、無論高杉には秘密ぜよ」
桜司郎は坂本の顔を見上げた。安全期怎麼算?每個人都要學會的經期計算方式 打算の欠片も感じさせない澄んだ瞳は、どこか松原に似ている。
「ほがな目ェで見られると照れるがよ。……話しにくいんじゃったら、ワシの質問ち答えるゆうんはどうじゃ?」
坂本は商人というだけあってか、人の懐に飛び込むのが上手かった。それなら、と桜司郎は頷く。
「おお。ほんなら、遠慮のう質問させて貰うちや。ええと、先ずは……まっこと桜花さんは女中ながか?その立ち方、手ェ、視線……どれを取ってもただの女中には見えんき」
武士は左に刀を差す為か、どうしても左へ傾いた立ち方をしてしまうのだ。そして水仕事で赤切れができるだけではなく、剣だこがある。
「それに、こないだのワシの問いかけに、何か言いかけちょったがや?高杉が女中やと代わりに答えちょったがけんど」
坂本の指摘の数々に、桜司郎は目を見開いた。見るものが見れば分かるものなのかと驚く。だが、会って間もない坂本へ自身の正体を知られることへの抵抗と、女の隊士がいると知れてしまうのは新撰組にとって不都合になりうるのではないかという思いが渦巻いた。
それすら読み取ったかのように、坂本は無邪気な笑みを深くする。
「知られて不都合ちゆうんなら、言いふらすことはせんちや。ワシは約束は守る男やき。……それに、桜花さんにとって損はせん……に関する情報を持っちゅうがよ」
新撰組の情報と聞いて心臓が高鳴った。それを抑えるように、胸に手を当てた。坂本の目が試すような色を孕んで桜司郎を捉える。
それに居心地の悪さを感じながらも、桜司郎は話す決意をした。そして唇を引き結ぶと、桜司郎は坂本の目を真っ直ぐに見返す。
「……私は、女中では無いんです。本当は……新撰組の隊士です。名は、桜花改め桜司郎と言います」
桜司郎が名乗った瞬間、風が強く吹いた。欄干に積もった軽い雪がふわりと舞う。それは月光に照らされ、眩く輝いていた。
坂本はポカンと口を開けていたが、やがて目を棒のように細める。
「新撰組の、隊士……。おまさんは武士じゃったがか!ほうか、ほうか!わはは、こりゃあ愉快じゃき!」
「……何が面白いのですか」
「ああ、すまんちや。馬鹿にしゆう訳や無いきに。嬉しゅうてのう。予想以上のものを聞いてしもうたぜよ。……ほいたら、ワシの番やが」
坂本は不敵な笑みと共に、ずいと桜司郎へ顔を近付けた。
「……近々、新撰組の本隊がまた安芸へ来るらしいきに」 その言葉に、桜司郎は零れ落ちそうな程に目を丸くする。
「それは……本当ですか」
「おうおう、まっことちや。嘘は吐かんと言うたにゃあ。……ワシは商人じゃき、色んなところから情報が舞い込きくるがよ〜?」
僅かに白み始めた東の空へ坂本は視線を移した。
「恐らく、逗留先は変わらんちや。……おまさんの覚悟次第では、手助けしてやりよらんこともないぜよ」
「手助け……?」
「うん。長州を離れるに、通行手形が要るやきね」
坂本の言う通りに、