吉田はそこは見なかった事にして話を続けた

吉田はそこは見なかった事にして話を続けた。

 

 

「実際それはデマだったけど周りから見ればそれだけ気に入られてたって事。案外恋敵多いんだよ。」

 

 

「ふーん。その辺の女子と変わらんように見えるけど,俺に拳骨しよる女子はそうおらんな。」

 

 

なかなか痛かったんだとけらけら笑った。

 

 

「まぁ細かい事は明日にでも本人に聞くさ。あーねみぃ……。」

 

 

そう言って大きな欠伸をしたその次にはもういびきが聞こえてきた。

 

 

「お前本当に自由だな。」 顯赫植髮

 

 

聞いといて結局これかよと鼻で笑った。

 

 

「まぁいいよ。しばらくは煩くなるけど。」

 

 

脱藩して来たと聞いた時には懲りずにどうしょうもないと呆れ返ったが近くに居たら居たで落ち着く騒々しさなんだ。

 

 

『一番頭を悩ませて心労を募らせるのは桂さんと乃美さんだね。』

 

 

あとは高杉が夜這いしようとしたら斬れるように脇差を忍ばせて眠った。

 

 

 

 

どんな状態でも体内時計はしっかりしていて朝の決まった時間になると一度目は覚める。

 

 

『うぅ……頭痛い……。』

 

 

熱でも出たかな?それでもひとまず朝餉の用意を……といつもの段取りを考えながら目を開けた。

 

 

「ん……おはよう。」

 

 

目の前には眠そうに目をこすってから爽やかな笑顔を見せる桂の顔があった。

 

 

「へ!?は!?はひ!?」

 

 

間抜けな奇声と共にばっちり目覚めたが思考はすっかり停止した。

何故同じ布団に桂が寝ているのか。勢い良く起きあがって周りを見たらここは自分の仮部屋で間違いない。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「すみません……昨日の記憶が全くないです……。」

 

 

悲壮感を漂わせて項垂れる姿を見てにやりと笑って体を起こし胡座を掻いた。

 

 

「晋作に無理に呑まされて酔い潰れたんだよ。そこからはもう大胆に誘ってくるから……。」

 

 

桂は照れ臭そうな表情を浮かべて少しはだけた胸元を整える仕草を見せた。

 

 

「へぇぇぇ!?」

 

 

そんな事したの!?だから私襦袢なの!?両手で頬を押さえて何て失態を晒したんだ!と絶叫した。

 

 

「なんてね。玄瑞の膝枕で寝始めたから連れて来たんだ。そしたら今の今までぐっすりだよ。

帯が苦しかったらいけないと思って着物は脱がしたけど。」

 

 

何もしてないよと笑った。

悲壮に満ちた顔がぽかんとして,そこからふつふつと怒りが込み上げてきた。

 

 

「全っ然笑えませんっ!」

 

 

「さぁてまだ早いから私はもう一眠りしようかな。」

 

 

三津の顔が真剣に怒った顔になる前に桂はくすくす笑って退散した。

 

 

 

 

 

台所でサヤとアヤメにからかわれた事を愚痴ったがそれでも腑に落ちない三津はむすっとして朝餉を用意した。

 

 

「ごめんって悪かったよ。」

 

 

配膳する三津の後ろを桂がついて回る。

それをサヤとアヤメがにやにやと見ていた。

 

 

「ん?喧嘩か?三津さん女は愛嬌やけ笑っちょらんといけん!そんな顔しちょったら桂さん余所に女作っちまう。」

 

 

高杉は笑顔笑顔と三津の両頬をむにむに解しながらにっと歯を見せて笑った。

 

 

「晋作,三津さんは引く手数多だからどちらかと言うと三津さんの方が選びたい放題だ。

だから桂さんの方が捨てられないように気を付けないと。」

 

 

周りは敵だらけですよね?と入江が意地悪く口角を上げた。

 

 

「三津はそんな事しない。」

 

 

少し焦りを感じた桂はむっと眉間に皺を寄せて胸の前で腕組みをした。

 

 

「さぁどうでしょう?壬生の旦那はとても優しくて三津さんに対しては穏やかに笑いますからね。」

 

 

久坂の一言は桂の胸をがっつり抉った。

 

 

『三津は男として意識してるのは私だけだと言ったんだ。』

 

 

だから斎藤なんかに靡いたりしないと思っている。思ってはいるが……。

 

 

「三津すまない許してほしい。もうあんな冗談言わないから。」

 

 

必死に許しを乞う。「壬生の旦那?やっぱりお前は魔性か。」

 

 

桂さんがいるのに他に旦那がいるのか?高杉は怪訝な顔でよく伸びる頬やのぉと白い頬を左右に引っ張った。

 

 

「正確には元旦那だよ。気易く触るな。」

 

 

吉田は高杉の耳を引っ張ってこっちに来いと三津から遠ざけた。

 

 

「それも語弊がありますからね。ホンマの旦那さんちゃいますからね。」

 

 

紛らわしい事言わないでと口をへの字に曲げた。

そう言われて慌てて乃美の横に

そう言われて慌てて乃美の横に並び膝をついて頭を下げた。

 

 

「三津と申します。」

 

 

宮部は三津の正面へやって来て屈み込むと顎に手を添え顔を上げさせた。

じっくり観察され,三津の目は忙しく泳ぎ回った。

 

 

「こりゃ可愛らしい女子たい。桂さんどこで見つけたと?」

 

 

「私は彼女に助けられたんですよ。あんまり触らないでもらえます?」

 

 

吉田の手なら叩き落としたが宮部の手をそうする訳にもいかずやんわりと手を掴んで外させた。【頭皮濕疹】如何治療頭皮濕疹及遺傳性的永久脫髮? @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 ::

 

 

「羨ましいのう色男で女子が選びたい放題の奴は。」

 

 

宮部はそう吐き捨てて元の場所に戻って胡座をかいた。

 

 

「三津さんは可愛らしいが肝は座っとるぞ。私は怒鳴られた。三津さん座り。」

 

 

乃美は自分の隣に三津を座らせ,それを見て桂は宮部の隣に腰を下ろした。

 

 

「そげな可愛らしい娘に怒鳴られたと?羨ましか。」

 

 

「そっ……その節は申し訳ございませんでした……。」

 

 

三津はあたふたしながら乃美の方に向き直り頭を下げた。

 

 

「構わん。間違ったことは言っちょらんけぇ。頭上げり。」

 

 

乃美は目を細めて三津の頭を撫でた。

 

 

「ええのぉ。私にも頭を撫でさせてくれ。」

 

 

羨望の眼差しを向けていると隣からは鋭い視線が突き刺さる。

 

 

「宮部さん。」

 

 

「冗談じゃ。」

 

 

『やっぱり変な人やった……。』

 

 

まだお酒も呑んでないのにこれだと呑むとどうなるんだと三津は苦笑した。

 

 

「失礼いたします。」

 

 

艷やかな声と共に静かに障子が開いた。

 

 

「お待たせ致しました。」

 

 

恭しく頭を垂れてしなやかに顔を上げた。

 

 

『うわぁ……幾松さんや……。綺麗……。』

 

 

普段会いに来るお松とは違って芸妓としての幾松に会うのは初めてで三津は釘付けになった。

 

 

顔を上げた幾松はゆっくりと三津の方へ視線を寄こした。

 

 

「お三津ちゃん!元気そうで良かったぁ!」

 

 

妖艶な笑みの幾松はすすすと歩み寄って三津に抱きついた。

 

 

「あの時はご心配おかけしましたし,わざわざ来てくれはってホンマに何てお礼言えばいい……か。」

 

 

抱きついた幾松の白粉の匂いが三津の鼻をくすぐった。

 

 

『この匂い……。』

 

 

嫉妬心を呼び起こす嫌な匂い。次第に三津の笑顔がぎこちなくなる。

 

 

「今日は私の妹達もお相手いたしますんでよろしゅうおたのう申します。」

 

 

そう言うと舞妓が二人入って来て幾松はすかさず桂の隣に座った。『着物,帯,簪……。全部お三津ちゃんに似合うのを見繕ったんやろなぁ。』

 

 

幾松はちらりと横目で乃美にお酌をする三津の全身を隈なく見た。桂の愛を一身に受けてるのが目に見えて憎らしい。

 

 

「可愛らしいお姉さんやわぁ。どなたが連れて来はったん?乃美様のお嬢様?」

 

 

「私の娘に見えるか?もし三津さんが娘なら絶対桂の嫁には出さんな。」

 

 

乃美はふんと鼻を鳴らして酒に口をつけた。お酒が入って顔を赤くした宮部はけらけら笑った。

 

 

「三津さんは桂さんが片時も離したくない女子だとさ。」

 

 

宮部がにやにやと笑いながら桂を一瞥すると舞妓達が目を丸くしてくすくすと笑った。

 

 

「嫌やわぁ幾松姐さんおるのにそんな冗談よしてくださいな。」

 

 

『まぁそうなるよね。』

 

 

不釣り合いなのは分かってる。三津は笑ってやり過ごすしかない。早くも居心地の悪さを感じる。

 

 

「こら二人共止しなさい。」

 

 

舞妓達を叱りながらも幾松は余裕の笑みで桂にしなだれかかってお酌をする。

 

 

『あぁやって白粉の匂いをつけて帰って来るのね。』

 

 

なるほどねと三津は納得しながら乃美へのお酌をし続けた。それしかする事がないんだ。

 

 

「三津さんは呑まんそ?」

 

 

ちょっとぐらいどうだ?と乃美が勧める。乃美に勧められては断れない。

 

 

「あまり呑めませんけどいただいても?」

 

 

「折角やけ呑み。」

 

 

笑顔で注がれては喜んで呑むしかない。

 

 

「いただきますね。」

 

 

ちょっとずつ呑み進めるのを肴に乃美は酒を呑む。

それを羨ましそうに眺める桂の太ももを幾松がつねり上げた。

 

 

「いっ……!」

三津は口を半開きにしてなるほど

三津は口を半開きにしてなるほどと感心していた。

 

 

「小五郎さん剣術凄いんですか?」

 

 

「えぇ,勝負を挑んでも私は勝てる気はしませんね。」 植髮香港

 

 

『本当に桂さんの事何も知らないのか?まぁ自分の事をひけらかす様な人でも無いのは分かるが何も知らなさ過ぎるのも不憫だな。』

 

 

「そんな凄いんですか!今日帰って来て疲れてなさそうならお話聞かせてもらおかな。」

 

 

目の前の三津は知らない一面を知れたと嬉しそうだった。

 

 

「何で桂さんを選んだんですか?」

 

 

勝手ながら吉田の方がお似合いだと思ってしまう。

 

 

「それは……私が前を向けるように助けてくれたからですかね。

気付いたらいつも近くにいて,いつの間にか支えられてて好きになってて。

小五郎さんの事何も知らなくても小五郎さんが長州藩士の桂小五郎と言う事実だけで私には充分なんやと思います。」

 

 

「ここぞとばかりに惚気けますね。やだなぁこっちが恥ずかしい。」

 

 

入江はにやにやしながら真っ赤になってく三津を眺めた。三津はそっちが聞いてきたのにと口を尖らせた。

 

 

「いや,思ってたより三津さんがしっかりした事を言ったので。

話に聞いてる三津さんは常に迷子で危なっかしい印象なんで。」

 

 

「常に迷子……。まぁ……道にも人生にも迷ってますよ間違いない……。」

 

 

がっくり項垂れる三津は優しい視線には気付かない。

 

 

「ほら,今私は三津さんを違う角度から見れましたよ?稔麿や桂さんは三津さんが危なっかしいと思っているが私は愛する人の為に真剣に向き合う誠実な方だと思いました。」

 

 

「入江先生は私の事褒める天才ですね。お茶のおかわり淹れてきます!」

 

 

鼻歌交じりに台所へ行った三津が先生!先生!と手招きで入江を呼んだ。

 

 

「どうしました?」

 

 

「あれ,たわんけぇ取って?」

 

 

棚の上の茶筒を指差した。

 

 

『……本当に人心掌握術に長けた人だ。』

 

 

入江は茶筒を取ると三津に手渡した。三津は上手に言えてた?と無邪気に笑う。

 

 

「えぇとっても上手ですよ。」

 

 

『こうやって狂わされていったんだなあの二人は。』

 

 

「私はその手には乗りませんよ?」

 

 

「え?何の話?」

 

 

おっとうっかり声に出してしまった。入江はこっちの話と意味深に笑った。

 

 

流石に会合では真面目な話をするからそれに集中出来て何とか終わらす事が出来たが,

 

 

「三津のせいで疲れが倍だ。」

 

 

げんなりする吉田に桂も久坂も深く頷いた。

 

 

「でもまだ九一から聞き出す事は山程あるからね。」

 

 

二人で何を話したのか問い詰めなくてはと藩邸に戻り入江を探したがまだ戻っていなかった。

 

 

「まさかあいつまだ入り浸ってんの?変な気起こしてないよね?」

 

 

「三津さんとの時間が相当楽しいんだな。」

 

 

久坂の意地の悪い笑みに桂と吉田の目が釣り上がる。

そこへふらりと入江が帰って来た。

 

 

「何を揉めてる?」

 

 

「九一こそ入り浸って三津と何してたの。」

 

 

嫉妬の塊に入江はふっと笑みを浮かべた。

 

 

「萩での話を少々。松陰先生の話と暴れ牛の話と。あとは三津さんの握り飯をいただいて帰って来た。楽しかった。」

 

 

入江の満足感に満ち溢れた顔に吉田の苛立ちが沸々と。

 

 

「何ちゃっかり三津の握り飯食ってんだ。」

 

 

「上手に握ってた。」

 

 

作ってもらっておいて何を偉そうにと食ってかかる吉田を尻目に桂と久坂は顔を見合わせた。

 

 

「そうか,九一助かったよ。三津には余計な事吹き込まなかっただろうね?」

 

 

「余計な事……。何も。」

 

 

自分では余計な事だと思わないので否定しといた。

 

 

「ただ桂さんに余計な事を言わせていただくとしたら,もう少し三津さんとお話されては如何でしょう?」

 

 

少し驚いた顔で入江を見つめたが一つ息を吐いて口角を上げた。

 

 

「それは三津が愚痴として溢したのかい?」

 

 

「いいえ,三津さんは惚気てましたよ。桂さんの事を何も知らなくとも貴方が長州藩士の桂小五郎だと言う事実だけで充分だと。

「さぁ巡察に行った行った。

「さぁ巡察に行った行った。斎藤,お前だけ少し残れ。」

 

 

土方の言葉に少し身構えて頷いた。

普段なら“えー斎藤さんだけ狡い!”なんてふざけた態度で居座る総司だが,腑に落ちない表情を浮かべながらも他のみんなと部屋を出た。

 

 

近藤土方山南の正面に一人残された斎藤は何でしょうと様子を窺う。顯赫植髮

 

 

「またお前の憶測が聞きたくてよぉ。」

 

 

『俺の頭ん中覗けるのかこの人は……。』

 

 

片口を上げて笑う土方に本当に根拠は無いですよと念押ししてから考えを告げた。

 

 

「多分桂は吉田よりも前から三津の近くに居たと思います。

吉田との関係が疑われた事であの色男が浮かび上がり,女将や客の証言で色男が現れたのが最近と聞いたので吉田よりも後と思っていました。ですが桂をいつ手当てしたのか時期を聞いていない。」

 

 

ただの憶測に三人は真剣に耳を傾けた。土方は面白いじゃねぇかと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「三津が長州者に命を狙われていた辺り桂は三津の事を一切周囲に隠していたのかもしれません。桂が目を付けていたとなれば手出しなどしないでしょう。桂は三津にも自分の正体を隠してただひたすら想っていたのでは。」

 

 

「……忍ぶ恋か。だとすれば敵ながら天晴だな。」

 

 

憶測ながら筋が通ると近藤が唸った。「もういいぞ斎藤。面白いモン聞かせてもらった。

後は桂とっ捕まえて答え合わせと行こうじゃないか。」

 

 

土方の言葉に斎藤は礼をして部屋を出た。

 

 

「……あくまで憶測だ。真に受けるな。」

 

 

そう独り言を残して自室に戻った。

 

 

「何でバレましたかねぇ。」

 

 

上手く気配は消してたつもりなのにと総司は頬を掻いた。

 

 

『もしそうなら本当に天晴ですよ。どうやったらそんなに忍ばせられるのか教示願いたい。』

 

 

未熟者の私には到底無理だと自嘲して修行でもしようかなと道場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

一人で留守番をする三津の所へ一人の遣いがやって来た。

ごめんくださいの声に玄関へ向かうと見覚えのある一人の男。

 

 

「あぁ!この前お話した!」

 

 

そうだ店の前を掃除している時に話しかけてきたあの男。

 

 

「どうも入江九一と申します。桂さんから預って来ました。これなら大丈夫じゃないか?との事です。」

 

 

三津の右手の方へ風呂敷包みを突き出した。

 

 

「貴方も長州の方でしたか。」

 

 

全然分からなかったと笑いながら,わざわざありがとうございますと風呂敷包みを受け取った。

 

 

「左手……稔麿は知りません。」

 

 

「え?」

 

 

一瞬ぽかんとしたがすぐに理解した。三津は微笑んで分かりましたと頷いた。

 

 

「気付かれないように気をつけますね。思い詰めてまた泣いてしまったら私も調子狂いますから。私が泣かされるならまだしも。」

 

 

「稔麿が泣いた?」

 

 

「はい。……お時間あるならお茶飲んで行きます?」

 

 

お話しますよと願ってもみないお誘いに二つ返事で上がり込んだ。

 

 

「どうぞ。」

 

 

お茶は上手に淹れる事が出来て安堵の笑みを浮かべお茶を出した。

 

 

「稔麿は泣いたんですか。玄瑞も桂さんも居たのに。」

 

 

三津は頷いて焦りましたと苦笑した。

 

 

「めっちゃ責任感じてたみたいで。私が勝手に身代わりになったんで逆に申し訳ない事をしたというか……。」

 

 

迷惑かけたかなと眉尻を下げて笑った。その顔を入江は無言でじっと見つめた。

 

 

「稔麿と言い桂さんと言い土方に斎藤も。どうすればそんな人心掌握術が使えるんですか。」

 

 

「人心掌握術?何ですかそれ。忍術ですか?」

 

 

そんな物体得した覚えがないと首を捻った。

罪滅ぼしに手伝わせてくれと総

罪滅ぼしに手伝わせてくれと総司が荷車を引く役を買って出た。

護衛代わりに斎藤も横に付き厳重に連れて行かれる。

 

 

「これぐらい大丈夫ですよ。女人可以接受禿頭嗎?出現「頭頂稀疏」等現象,是女士脫髮警號! @ 香港脫髮研社 :: 痞客邦 :: よく寝たからかだいぶマシなんです。歩いてでも診療所まで行けますよ。」

 

 

三津は余裕の笑みを浮かべてるつもりだが痛みで歪んでいた。斎藤は三津の左腕があまり動かないのが気になっていた。

 

 

「左手はどうだ。掴めるか?」

 

 

自分の手を差し出した。三津はえへへと笑って誤魔化した。

 

 

「斎藤さんは鋭いなぁ。あんまり力入らんくて。」

 

 

「こんなにお三津ちゃんの事見てるのにホンマに旦那さんやないんですね。」

 

 

ユキの指摘にそこは触れないで欲しいと思う斎藤。

確かに自分が旦那だったら三津はこんな目に遭わなかったのにと思いながら目を伏せた。

 

 

「何故よりによって長州……。」

 

 

「すみません厄介な人に好かれて。」

 

 

『しまった心の声が……。』

 

 

口に出すつもりは無かったが漏れていたらしい。しかし本当に何故なのか。きっかけは何なのか。

 

 

『コイツが暑気中りで倒れたのを連れて帰ったのは副長。吉田が店に通いだしたのはその辺りからと言う。ならば吉田は副長の女だと思って近付いていたのか?』

 

 

でも甘味屋に足繁く通っていたのは総司であって土方は滅多に出向かない。それに女中になる以前の話。

 

 

『やはりどこかが嘘なのか?』

 

 

だけども斎藤には三津が嘘をついたなら見破れる自信があった。目が合うと三津は笑みを浮かべる。

 

 

『考えれば考える程分からん……。』「すみません肩を貸していただけますか?」

 

 

ユキの声に斎藤は思考の渦から引き戻された。

 

 

『もう着いたのか……。』

 

 

総司と斎藤が両側から肩を貸して三津を診療所の中へ連れて行った。

三津を布団に寝かせたら自分達の役目は終わりだ。

 

 

「しっかり傷を癒やして帰るんだぞ。」

 

 

「はい,ありがとうございました。沖田さんもありがとう。」

 

 

斎藤の隣で何か言いたげにしていた総司だが,

 

 

「はい,では私達はこれで。」

 

 

笑顔であっさりと立ち上がった。そして先生とユキによろしくお願いしますと頭を下げて診療所を出た。

 

 

「……本当は見舞いに来てもいいかと聞きたかったんじゃないのか?」

 

 

「やだなぁ斎藤さん。勝手に頭の中を覗かないでくれます?精一杯押し留めたんですから。」

 

 

参った参ったと笑っているがいつもの元気はどこにもない。

 

 

「まだしばらくはアイツの姿を拝めるさ。まぁ副長が監視に誰を充てるかは分からんが吉田が来るかもしれんとなると我々の誰かが交代だろう。」

 

 

間違いなく一回は当たるはず。そう落ち込むなと肩を叩く。

総司はへへっと笑った後に大きな溜息を一つ。

 

 

「まだ頭の中が整理出来ないんですよ。でも何を整理しなきゃいけないのか分からなくて。邪心だらけでお恥ずかしい……。」

 

 

総司は眉尻を下げて笑った。

それは斎藤も同じだった。

 

 

「本当に最初から最後までアイツは謎だらけだ。分かりやすい顔をする癖に掴みどころが無い。」

 

 

「今回はみんなが三津さんを信じてくれました。私も信じています。

でもまだまだ胸騒ぎがするんです。」

 

 

「副長か?」

 

 

総司は小さく頷いた。

 

 

「土方さん色男が気掛かりみたいで……。今度はその色男を捕まえる気ですかね。」

 

 

「自分より色男か確かめたいのかもな。」

 

 

「あぁ!それは納得ですね!土方さん自分大好きですから色男って言葉には敏感ですしね!」

 

 

今はこんな他愛も無い話が救いになる。この胸騒ぎが勘違いで済めばいいと願った。

 

 

 

 

 

 

 

三津が診療所に移った。それはすぐに桂の耳に入った。

 

 

『思ったより早かったね。疑いが晴れたのか。それとも何かの作戦かな?土方君しつこいからね。

どっちにしろ今度はもう離さないよ。絶対に。』

呼吸は浅く時折痛そうに顔を歪める

呼吸は浅く時折痛そうに顔を歪める。だけど蔵から助け出した時よりはマシに思えた。

 

 

斎藤はそのまま三津の傍らで胡座をかいたまま仮眠を取ろうとするが,やはり土方が訪ねて来ていた事が気になる。

 

 

『少し冷静になって気付いたのだろうか。easycorp 自分が間者への拷問としてコイツに手を上げたのか。それとも嫉妬からの行動なのか。いずれにせよ副長は三津を手放す気はないだろう。』

 

 

平穏な暮らし戻してやりたいが,ここまで深く関わりを持ってしまった。そんな暮らしに戻れるだろうか。

 

 

『副長の事だ。しばらくは様子を見てまた吉田が会いに来た所でコイツ諸共捕まえるに違いない。いや,もう間者として捕まえなくていいようにここで繋ぎ留めておく気かもしれん。』

 

 

次に二人が会うとすれば,もう長州者とは知らなかったが通用しない。

 

 

『主人と女将は気が気じゃないないだろうな。』

 

 

心配の余りきっと三津を迎えに来るのではないか。斎藤はそんな気がしていた。翌日,斎藤の予想通り功助とトキが屯所までやって来た。

全てを包み隠さず伝えて三津に会わすべきか決め兼ねていると,

 

 

「アイツが本当の事言わなくていいっつってんだろ。言う必要はねぇさ,今日はお帰りいただく。」

 

 

そう告げて土方が対応に出た。

門の前で足止めされていた功助とトキは土方の姿を見て深々と頭を下げた。

土方も二人の前まで来ると深く頭を下げた。

 

 

「旦那に女将,わざわざ足を運んでいただいたんだがまだアイツに会わす訳にはいかないんです。これはお二人も長州と何ら関わりの無い事を証明する期間でもある。

もうしばらく預ったらお返し致します。」

 

 

「一目会うのも叶いませんか……。」

 

 

門前払いも覚悟の上で来たつもりだが,もしかしたらと淡い期待も持って壬生までやって来た。功助は手を合わせお願いですと何度も何度も繰り返した。

 

 

土方は首を横に振るばかり。トキはポロポロ涙を零して懇願したが叶わなかった。

とぼとぼ引き返して行く二人の背中を見えなくなるまで見つめていると,

 

 

「本当に鬼ですね。」

 

 

総司がひょっこり現れた。

 

 

「長州に関わるとこうなるっていい見せしめにもなったろ。恨むなら俺らじゃなく吉田を恨むこったな。」

 

 

鬼だ人斬りだと蔑まれどんな悪名がつこうとも,誰に何と思われようとも平気だったが今回は何とも後味が悪い。

 

 

「お二人が吉田を恨むとは思えませんね。吉田は三津さんを好きで通っているお客。我々は何も知らなかった三津さんを捕まえて帰さない悪い奴ら。」

 

 

損な役回りだなぁと寂しそうに笑った。

 

 

「俺はまだ気になる事があんだよ。」

 

 

吉田の件はもういい。気になるのは色男。何だか釈然としないのだ。

 

 

「色男ですか?もしかしたらまた三津さんに会いに来るんじゃないですか?」

 

 

「あぁそうだな。」

 

 

その為には早く三津を甘味屋に返さなければならない。

ここで初めて三津に重傷を負わせた事を後悔した。

 

 

『何処の誰だか分からねぇその色男,しかと拝んでやるまで気が済まねぇな。』

 

 

色男と言うだけで気に入らないと言うのに三津を着飾らせて連れ出そうとしたのも気に入らない。そう全てが気に入らない。

土方はこれからの事を頭に描きながら自室に戻り,総司は三津の元へ向かった。「三津さん具合はどうですか?」

 

 

部屋を覗くと近藤と山南が居た。

二人は何の用?と三津の傍らに腰を下ろした。

 

 

「大丈夫,元気!おじちゃんとおばちゃん来てたんやってね。」

 

 

会いたかったけどこんな姿は見せられへんわと戯けた。

 

 

「すみません早く帰してあげたいんですけど……。」

 

 

「もうすぐ先生達が来るからね色々と相談してみようね。」

 

 

山南はもう少し辛抱してくれと優しく三津の頭を撫でた。

 

 

しばらくして先生とユキがやって来てそのまま三津を引き取ると言った。

三津は荷車に乗せられ診療所へ運ばれる事になった。

 

 

「痛いと思うけどごめんね。」

 

 

「なるべくそっと引きますから。」

三津はえへへと笑いながら頬を掻いた

三津はえへへと笑いながら頬を掻いた。

でもすぐにもしかしたら悪い噂かもと眉間にシワを寄せた。

 

 

「副長が今日からゆっくり寝れると欠伸でもしてるんだろ。気にする事はない。」

 

 

「えー…いつもぐっすり寝てはるけど…。」顯赫植髮

 

 

朝起きれば,布団を目深に被っている土方を揺り起こすのが日課なんだけど,と首を傾げた。

 

 

『無自覚と言うのは恐ろしいな…。』

 

 

この際だから教えてやろう。

斎藤は咳払いをしてから三津の寝言について話し始めた。

 

 

「お前も目の下にクマを作って随分とやつれているが,ここ最近副長も寝不足だ。

クマが出来たせいでより人相が悪くなってる。」

 

 

「斎藤さん以外と口が悪いんですね。」

 

 

二人が同時に足を止め,顔を見合わせた。妙な沈黙がしばし流れた。

 

 

「…話の腰を折るな。その寝不足の原因を教えてやろう。紛れもなくお前だ。

毎晩毎晩悲鳴を上げられ,衝立一つ挟んだだけの至近距離で寝ている副長が起きない訳なかろう。」

 

 

言ってやったぞと腕組みをして胸を張った。

 

 

三津は呆気に取られて口を半開きにしたまんま斎藤を見つめた。

 

 

「じゃあ私が十日も休暇になったのは土方さんの安眠の為ですか?」

 

 

「それもあるがやっぱりお前には分かって欲しいんだろ。自分達の立場や役目を。」

 

 

それには三津も押し黙る。

やっぱり自分が考えを改めなければならないらしい。

 

 

「斎藤さん,ここでいいや。一人で帰らないとまだ道覚えてないんか!って怒られてまう。」

 

 

三津は冗談っぽく笑って斎藤より一歩前に出た。

 

 

「では十日後の今ぐらいの時刻にまた迎えに来る。」

 

 

「はぁい!」

 

 

三津の緊張感の無い返事に小さく息を吐く。

今は道案内ではなく,護衛も兼ねてある。

 

 

「一人で帰って来ようとするんじゃないぞ。」

 

 

「分かってますよ!待ってますね,旦那様。」

 

 

茶化してるつもりでも,斎藤には通じなかった。

 

 

「何も考えないのも一つの手だ。ゆっくり休め。」

 

 

にっと笑ってみせる三津の頭にそっと手を乗せた。

それから優しく背中を押して甘味屋へと歩かせた。

 

 

三津はこくりと頷いた後,小さく手を振って店の暖簾の奥に吸い込まれていった。「ただいまぁー!おばちゃん大福三つ頂戴っ!」

 

 

三津の威勢のいい声が店内に響いた。

店内に居た客達は目を輝かせて熱い視線を注いだ。

 

 

看板娘の帰宅に誰もが目尻を下げてお帰りお帰りと声をかけた。

三津もそれに笑顔で応える。

自分を甘やかしてくれる空気が心地いい。

 

 

功助とトキは目を丸くして顔を見合わせた。

それから頷き合って,大福を三つ包んだ。

 

 

「早よ帰って来ぃ。」

 

 

包みをそっと手渡しながらトキが囁いた。

三津は口角を上げながら頷いた。

 

 

「で,この荷物は部屋にお願いっ!じゃっ!」

 

 

風呂敷包みをトキに押し付けて三津はすぐに店を飛び出した。

 

 

「あ!ちょっと三津!」

 

 

トキの呼び止める声に後ろ手を振った。

 

 

「帰って来たら問い詰めたるんやから…。」

 

 

先日土方達が訪ねて来てからずっと気がかりだった。

だけど,どうやら思ってたより三津は元気みたいだ。

それには安堵の息をついた。

 

 

『何だもう出て来たのか…。』

 

 

帰って早々に何処へ行く気なのか。

少し離れた位置から店を見張っていた斎藤は,気取られないように三津の後をつけた。

 

 

三津の足は迷う事なく進んで行く。

次第に人気の無い方へと向かっているのが気になる所だが,静かに様子を見守った。

 

 

とある場所で三津の足が止まった。

辿り着いた神社の石段。三津はそこに腰を下ろした。

 

 

『随分と歩いたから疲れたのか。』

 

 

こんなに歩いて帰り道は分かってるんだろうか。

石段に座ったまま,ぼーっと遠くを見つめる姿に少々の不安を感じた。