は、持ち主が埋められているちかくに落ちていたらしい。
どこの隊の何という名かもしれぬ兵卒の死体は、近くの寺に運んで供養してもらったという。
そして、熊の死体はアイヌの人たちに渡したということだ。
とんだ熊騒動の一夜であった。
いよいよ、宮古湾への出撃が明日に迫った。
称名寺から島田や蟻通たちがやってきた。
子どもらもやってきた。
安富も出陣するため、松前城にいる馬たちの面倒を沢と久吉と共にみるためである。
その子どもらの面倒は、沢と久吉がみてくれる。
子どもらは、上機嫌である。
いつもはまったく参加させてもらえないのに、今回は馬の面倒をみるという体を動かして働くという大役を仰せつかったわけである。
前回の五稜郭攻略の際の桑名少将の護衛というよりかは、よほど価値がある。
子どもらは、そう判断したらしい。
子どもらは子どもらなりに、桑名少将の護衛というのがただのごまかしであったことを見抜いていたのだ。
かれらは、護衛の任務を与えられて喜ぶふりをしていたわけだ。
子どもたちは、かれらなりに気を遣っているのである。
それはそうと、意外なのは安富である。
よくもまあ、馬たちとしばしのお別れを決意したものだ。
当然、今回の海戦に馬は必要ない。ゆえに、安富は残るだろうと思いこんでいた。それは、副長も同様である。
まさか、かれが参戦するとは思わなかっただろう。
意外に思った副長が、安富に尋ねたそうだ。
『なにゆえ、馬を必要としない海戦に率先して参加するのか』
そんなふうに尋ねたわけである。
『利三郎が死ぬのであろう?死にっぷりをみずにおられるか。いかなる死にざまか、愉しみでならぬ』
すると、かれはそういって大笑いしたという。
いや、安富。野村は死なないし。
俊春が野村の影武者を務めると説明するも、
『史実どおりになるやもしれぬであろう?』
と組むんだったよな」
本来なら、新撰組は遊撃隊や彰義隊の選抜メンバーとともに蟠竜に乗船する予定だった。が、実際に甲鉄に攻撃を仕掛ける回天に乗船する彰義隊のメンバーのなかに、野村とともに死ぬ予定の者がいる。その者たちを救うため、彰義隊のメンバー全員を蟠竜に乗船させることにした。それについて、副長は当初しぶっていた。彰義隊もまた、新撰組を見下している。副長がなにかいえば反発してくると予想したからである。が、榎本を通じて打診してもらったら、即座にOKをだしてきた。ゆえに彰義隊のかわりに新撰組が、具体的には新撰組の幹部が回天に乗船できることになった。
に残って力を温存しておけ』とおっしゃるのです。どうやら、人見さんは甲鉄奪還作戦は失敗におわると踏んでいるようです。の隊士を乗せるのも、渋っていました」
「まぁ奪還できるって前向きにかんがえているのは、仏蘭西軍の兵隊さんと榎本さんくらいだがな。でっ?おまえは人見さんのを無視してまで、なにゆえいきたがる?」
「無論、利三郎君が死ぬところをみたいからです」
きっぱりはっきりすっきり答えた伊庭を、全員が呆気にとられたようなでみた。
「というのは冗談です。利三郎君の影武者になる、ぽちのお手並みを拝見したいのです」
伊庭まで俊春をぽちと呼ぶところがフレンドリーすぎてうらやま、いや、草すぎる。
「それに、やはり歳さんたちといっしょにいたほうが面白い。すごいものをみることができますし、経験ができます」
室内は静まり返っている。
伊庭は、もしかして超絶ストイックな性格だったのか?
『面白くてすごいものをみることができて、経験もできる』
たしかに、それは間違いない。意外懷孕 百パーセントどころか千パーセント確実にできる。しかも、永久保証をつけてもいい。
「あ、ああ。まあ、な。それはまず間違いない。十二分に堪能できるだろうよ。
「わたしは外されたのです。人見さんが、『八郎は
そういって