でもないのに

でもないのに、おれを怒鳴り散らすなんて理不尽すぎる。

 

「死ななくってよかったです」

 

 へらっと笑って気持ちを伝えると、副長はまた握り拳をつくった。

 

「まぁまぁ土方さん。

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ちょうどいい機会だ。はやいところ偵察をすませ、にのりにいけばいい。なっ、そうであろう?」

 

 蟻通が提案してきた。

 

「あ、ああ。そうだな」

 

 副長は蟻通にぶっきらぼうにいうと、「竹殿」にすまなかったと謝ってからその背にのり、またすすみはじめた。

 

 ったく、なんだよ。

 

 それからは、沈黙を貫いた。

とりになりかねない。

 

 息をするのもヤバいかもしれない。

 

 ヒヤヒヤしながら、一番最後をついていった。

 

 

 

 わお……。

 

 これが二股口か……。

 

 現代のは、ほとんどこの当時のままかわっていないらしい。

 

 たしかに、映像でみたのとあまりかわりはない。

 

 かわっているとしたら、現代にはここが二股口であると示す標識がたっているというところであろうか。

 

「副長。わんこと兼定兄さんとで、このあたりから乙部方面へ向け広範囲をみてまわってきます。このまま上に登ってみてください」

 

 お馬さんからおりた俊冬が申しでると、副長は一つうなずいた。

 

「頼むぞ。おれの「常勝将軍土方歳三」伝説の更新は、おまえら二人と兼定とにかかっているんだからな」

 

 副長ったら、いくらなんでも厚かましくはないか?

 

 完璧、俊冬と俊春におんぶに抱っこ状態じゃないか。

 

「熊にご注意を」

「案ずるな。ほら」

 

 俊冬のアテンションに、副長は馬上でニヤリと笑った。

 

 それから軍服のポケットに掌をつっこむと、ごそごそ探りはじめた。

 

 んんん?

 

 もしやもしや胡椒爆弾とか火炎瓶とか、お得意のチートアイテムでも持参しているのか?

 

 はたして、それらが馬鹿でかい羆に通用するのか?

 

 それであれば、銃をぶっ放したほうがよほど効果があると思うのだが。

 

 そうなのである。

 

 おれたちは、羆に備えて鞍に銃を装備してきているのである。

 

 そんな風にかんがえていると、副長はうれしそうに掌を差しだしていた。

 

 掌の上に鈴がのっている。

 

 ちょっ……。

に様子をみにくると決めた際、鈴は熊避けになると伝えた。

 

 伝えたけれども、いったいどだれだけの数の鈴をもってきているんだ、イケメン?

 

 副長の掌の上に、こぼれ落ちるほどの大量の鈴がのっかっている。

 

 ってかこの短時間で、よくぞこれだけの鈴を集められたものだ。

 

 ムダに感心してしまった。「そ、それはなんだ?」

「勘吾、みてわからぬのか?鈴だよ鈴」

「いや、それはわかっている。なにゆえ、そんなにもっているのかってきいているんだよ」

「主計が熊避けになるっていうからな。一つや二つよりも、たくさんあったほうがご利益があると思ったんだ」

 

 マジか?

 

 ご利益?

 

 どういうこと?

 

 ツッコミどころ満載ではあるが、いまはスルーしておこう。

 

 それにしても、副長、ちょっとかわいいかも。

 

 せっせと鈴を集める副長を想像すると、微笑ましく感じられる。

 

「ほら、全員いくつかずつもっていろ。「チリンチリン」と音をさせながらあゆめば、熊も驚いて逃げちまうだろう」

「では、いただきます」

「あ、ああ。たしかに、それはそうかもな」

「愛しの馬にもつけておこう」

 

 島田と蟻通と安富がそれぞれちかづき、掌をのばしていくつかずつ鈴をとった。

 

「ほら主計、おまえもだ」

「あ、ありがとうございます」

 

 やさしい口調でいわれ、おれも馬をよせた。

 

 なにゆえか裏があるように感じられるのは、おれの性根が悪いからか?それとも、副長の日頃のおこないが悪いからなのか?

 

「では、おれも二、三個」

 

 なにか仕掛けられるのでは、とドキドキしつつ掌をのばして副長の掌上から三個いただいた。

 

 なにもおこらなかった。

 

 オチはないようだ。

 

「ぽちたまは?」

 

 副長は、はやく物見にを振った。

 

「お気持ちだけいただきます。おれたちは、音のでるものは身につけられませんので」

 

 俊冬のこたえに、ムダに納得してしまった。

 

 こっそりひっそりそっと系の任務や行動がおおいかれらである。鈴にかぎらず、なんらかの音がするようなものはご法度だろう。ついでに、においもである。

 

 ブランド物の香水やオーデコロンなどつければ、すぐにわかってしまう。おっと、それをいうなら整髪料もだし、消臭剤などもそうだ。

 

「では」

 

 俊冬と俊春は一礼し、相棒とともに消えた。

 

 ドロンと消えた。

 

 すこし先の木の枝がわずかに揺れた音がし、そのあとは鳥の鳴く声だけになった。

 

 枝から枝へ飛び移っていったんだ。

 

 こういうアクションもやはり、漫画のパクリなんだろう。

 

「よし。おれたちもゆくぞ」

 

 馬からおりて鈴をベルトに結びつけ、銃を鞍からとって肩にかついで準備を整えた。

 

 安富は、愛しいお馬さんたちだけにするわけにもいかずに残ることにしたようである。

 

「もしも熊がでたら、馬たちとともに逃げるのであしからず」

 

 安富は、しれっと宣言をした。

 

 さすがである。

 

 とっとと逃げるってところも驚きであるが、熊がでたことを発砲してしらせることすらしてくれないところも、びっくり仰天である。

 

「ああ、勝手にしろ」

 

 副長も、安富にかんしてはあきらめているらしい。

 

 苦笑とともに了承した。

 

 おれだけでなく、副長も島田も蟻通も銃を肩にかついでいる。懐にはいきたくってうずうずしているであろう俊冬と俊春にもすすめた。が、二人は同時に

 

 ただの雑談が、