の為に面識を持てて

 その為に面識を持てて良かったと思うよ。軍旗では見わけもつかないかも知れんが、俺が駆けつければ済む話だ。そういうこともあってやはり分散するわけにもいかん。出来て二つ、荀彧と俺がばらけるのが限界だぞ。

 

「……檄文を手にした諸侯らは上洛するでしょうか?」

 

 それな、何処に誰が居るかは把握してないんだよ俺は。

 

「これを機にやって来る奴は必ずいるさ、避孕方法 それも大勢な。そのうちの僅か一握りだけが、本心から国を思って行動しているだけで、殆どは好機とみて影響力を手にするために動く」

 

 間違いないぞ、混乱が起きれば誰でも一旗あげることが出来るからな。そういう俺も似たような者だが。

 

「でありましょうな。そう言えばこのあたりの山中に、陳概殿が住んでおられます。陳紀殿の縁続きで、宮廷に出仕していることも御座いました。今は隠居して畑を耕しながら書を読む日々だとか」

 

「何かしら気づいたことが無いかを聞いてみるのも良いかもな。明日訪ねてみてくれ」

 

 全員で押しかけるのは迷惑だからな、少数で様子を伺うだけでいい。地元の案内人として話を聞けたら上々だよ。警戒を置いて夜を明かすと、日の出から僅かで移動を再開した。山地に入ると山の中腹を行くようにして、部隊を半分ずつにする。

 

 二キロ程度離れた場所なので目視可能で、緊急時には旗でやり取りが出来るようにしてあった。こちらは近衛騎兵ばかりで、向こうは残り全てを甘寧と典偉に任せている。

 

「我が君、ここから西に行ったところに陳概殿の庵があるので少々外します」

 

「気を付けて行って来るんだ。郷土兵五十を連れて行け」 荀彧の護衛と言うことならばしっかりと働くだろう、何せ猛獣が出る可能性もある。人相手ならば知恵で何とか出来たとしても、言葉が通じなければどうにもならない。

 

 さて、若干の斥候を出しながら進んでいるが何の手がかりもないな。張遼は先行して主要な箇所を確認して回らせているが、そういうところは避けているんだろうか。こちらより遅れているとは思えんが、何処にいるんだ?

 

 山間の道を北へ向けてうねりながら進み続ける。備えてあったので水も食糧も七日は持つので独立行動は継続可能だ、北西に十数キロ行けば郷があるらしいが。昼飯の為に大休止始めたところで兵が駆け込んできた。

 

「申し上げます! 荀彧様より火急の報告です! 陳概殿の庵に陛下の一行が寄られたとのこと、馬車を求めて治水郷へ向かわれたようです!」

 

「何だと! 全軍に告ぐ、速やかに移動を行うぞ。甘寧張遼にも早馬を出せ、事は一刻を争う近衛騎兵だけでも先行するぞ。趙厳ここへ!」

 

 唯一残っている幕僚がこいつだ、これだけあちこちへ送ってもまだ居ることに感謝だよ。やって来ると拳礼をして畏まる。

 

「ここに!」

 

「皇帝の足跡が見つかった。俺は近衛騎兵を率いて治水郷へと急行する、趙厳は歩兵を統括して追いつけ」

 

「承ります!」

 

 飯抜きで諦めて貰うぞ、都に戻れば腹一杯食わせてやるさ。ここで遅参するようなことになれば悔やんでも悔やみきれんぞ。騎馬すると矛を手にして声を上げる。

 

「聞け羽林の騎兵たちよ、陛下の消息が掴めた。我等はこれより万難を排してその御元へと急行する、食事をしている暇はない、即座に動くぞ!」

 

「応!」