「洛陽外城十二門が閉門、出入りが厳しく制限されました!」
「曹操殿より、帝が行方不明であるとの密書で御座います!」
「執金吾による洛陽巡回が実施されています!」
「周辺諸侯へ、何進大将軍より檄文が出されていた模様です!」
荀彧と顔を合わせてその檄文とやらの内容を調べることになった。東へは俺が伝令も出してる、保険だよ保険。朱古力瘤 何かしらの対抗策を用意していたと考えられるなこれは、だがそれすらも貫いて暗殺に成功した。こいつは宦官らの能力と結束の結果か?
「これは非常にまずいことが起こるでしょう」
「野心あるやつらが軍を率いて上洛をするわけだな。その前に俺達が皇帝を助ける、その為にここに陣取っているんだ。いよいよ動くぞ」
伝令は出せても洛陽から軍兵を繰り出すのには混乱が大きい。司隷校尉は袁紹だから、あいつの許しがある部隊だけが出入りを許されているわけだ。恐らく最初から外に居なければ、曹操あたりの入れ知恵で俺は城内で待機になっていただろうな。
「張遼!」
「ここだ!」
部隊へ目をやっていた張遼を呼び寄せると「調査済みの北部山地へ先行しろ。武兵団五十と泰山兵百を連れていけ。文聘も一緒に行くんだ」要所へ目を光らせる為に命じる。本隊は物資の移送準備をしてから二時間以上遅れて動くことになるな。
手持ちの兵は近衛八百に武兵百、郷土兵百に泰山兵四百だ。泰山兵の忠誠度は疑わしいし、近衛兵は俺の直下でなければ命令出来ん、郷土兵は陳韋らの取りまとめで戦闘で消耗するわけにもいかん。数が居るようで争いには向かない集団になっているぞ。 河を渡って北側、平県の領域に軍を進めた。県の南部だけが平地で、その殆どが山岳になっている。それらに歴代皇帝の陵墓があるので、あちこちに立ち入り禁止区域が設定されている。平民が迷い込めば首を落とされるので、危なすぎて一般人は殆ど寄り付かない。
現代のような風景を想像してはいかん、未開の野山の間に草が生えていない程度の踏み固められた土があればそれが道と呼ばれる、移動をするのに大層苦労するものだぞ。陽が暮れてしまえば軍を動かすことなど出来ない、適当な場所を見つけて野営することにした。
目につくように火を焚いている、こちらの存在を知らしめるためだ。張遼のところの伝令がやって来たが、目ぼしい情報は何も無い。幕にやって来た荀彧を見たが、こちらも収獲無しだった。
「絞り込んでいるにしても、この人数で探すには広すぎるな」
五つに分散して捜索をさせることも出来るが、規模が小さすぎてどうにもならんぞ。
「洛陽で行方不明とのことですが、もしや潜んでおられるのでは?」
その可能性はある、だがあちらで見つかればそれはそれで構わん。だが歴史では董卓が保護をしたから幅を利かせるようになったんだ、ならば都には居ないぞ。
「かも知れん。だが俺達はそうではない時の為に外で動いているんだ、僅かな供回りと共に落ち延びているとしたら、苦労をしているだろう」
今まで安全で暮らすには不自由ない場所で育ってきたんだ、獣も居れば盗賊も居るような城外で、屋根もなく過ごすのは辛いだろうさ。
「一刻も早くお見つけしなければなりません」
「或いはあちらから見付けて貰うかだ。味方だと解れば接触して来るだろ」