として最高の贅沢といえる。

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 副長に蹴り起こされるまで、ぐっすり二度寝してしまっていた。

 

 

 

 それはもう、子宮腺肌症治療 まるでお祭り騒ぎである。

 

 港に、おおくの将兵が集まってきている。

 

 みんな、宮古湾へ向かうおれたちを激励しにきてくれているというわけだ。

 

「利三郎さん、気をつけてね」

「利三郎さん、死なないで」

「利三郎、死ぬなよ」

「任務などどうでもいい。さっさと逃げだせよ」

「そうだそうだ。「命あってのものだね」、だからな」

 

 そのおおくの将兵たちのなかには、非番の新撰組の隊士たちもふくまれている。

 松前から駆けつけてくれたのだ。

 

 いまは、子どもらとともに野村を取り囲んでいる。

 

 みんなに取り囲まれてちやほやされているのは、この海戦で華々しく海の藻屑と化す予定になっている野村である。

 

 といいたいところではあるが、実際取り囲まれているのはその影武者を務める俊春である。

 

「利三郎は?」

 

 蟻通がちかづいてきた。

 

 かれに無言のまま、目線でしらせた。

 

 本物の野村は、副長に文字どおり首根っこをおさえられている。

 

 いまは、副長と伊庭にはさまれた状態である。

 

 どうやら、副長は人見と話をしているようだ。

 

 その周囲には、島田、中島、尾関に尾形、さらには俊冬と相棒ががっつり取り囲んでいる。

 

 本物の野村は、まるで重要参考人みたいだ。

 

 そこまでしないと、野村を連れてゆけないってところが草すぎる。

 

 それは兎も角、相棒の乗船許可はすんなりおりた。

 

 海軍奉行の荒井も回天の艦長である甲賀も、大の犬好きであった。しかも、相棒の噂をきいているらしい。

 

「どうぞどうぞ」

 

 二人とも、ソッコーで快諾してくれた。

 

 というわけで、犬連れで出陣というわけである。

 

 今回の海戦は、世界的規模でみても稀有な接舷攻撃を繰り広げることになる。

 しかも、その船にはこの時代にはまだ交配されていないジャーマン・シェパードが乗船しているとなると、二倍にも三倍にも稀有であるといえよう。

 

 号令以下、乗船が開始された。

 

 子どもらは、相棒だけでなく俊冬ともハグをしている。

 

 でっおれには……?

 

「じゃあね、主計さん」

「怪我、ひどくないといいよね」

 

 市村と田村は、ちっともそう思っていないのにそんなふうに声をかけてくれた。

 

 総裁たる榎本からも激励の言葉があり、いよいよ出航である。

 

 朝一番は晴れ上がっていた空も、あっという間に雨雲におおわれてしまった。

 大粒の雨が、シトシトと落ちてきている。

 

 それももうじき、すごい暴風雨になるだろう。

 

 そんな雨のなか、にいるみんなは必死に手を振ってくれている。

 

 もちろん、おれたちもそれにこたえて必死に振る。

 

「任せておけっ。野村利三郎っ、立派に死んでみせるぞーーーーっ!」

 

 そうに向かって叫んだのは、本物の野村である。

 

 かれを、無事に乗船させることはできた。

 

 が、いきなりの『立派に死んでみせるぞ』宣言である。

 

「ばっ、馬鹿野郎っ!縁起でもないことを叫ぶんじゃない」

 

 その野村の口を、副長が慌ててふさいだ。

 

 野村が死ぬなんてこと、ほかのだれがしっていよう。

 それを、『死んでみせる』って……。

 

 フツーにアウトだろうが。

 

 さらには、死なないし。

 

 いまのだったら、まるで影武者役の俊春に死ねと強要しているようなものだ。

 

 野村は、誠に自分勝手な男である。

がみえなくなって沖にいたったには、雨だけでなく風もでてきた。当然のことながら、波もたちはじめている。

 

 揺れが激しくなってきた。

 

 人差し指の先で、慌てて耳のうしろをぐりぐりまわした。

 

「ここにいても役に立たぬしな。下に降りて横になったほうがよさそうだ」

「そのようですな」

 

 副長と島田が話をしている。

 

 伊庭にあらためて説明した。

 

 暴風雨になること、そのせいで蟠竜とはぐれてしまうこと、などなど。

 

「みんなに慣れていませんからね。時化ればは大揺れします。船酔いしないよう、はやめに自衛したほうがいいでしょう?」

「言の葉は悪いかもしれぬが、のことがわかっていたら便利なこともあるな」

 

 伊庭はそういってから、慌てたようのおれとを合わせた。